「教育分野などAIの利活用について」第37回 Bluesky勉強会(3):上松恵理子 新潟リハビリテーション大学特任教授
「教育分野などAIの利活用について」第37回 Bluesky勉強会の先日のブログの続きです。
25日夕方、参議院議員会館にて、第37回勉強会(会場・リモートのハイブリッド)を開催。
Bluesky勉強会は平成26年8月に第1回の勉強会を開催以来、ICTの利活用など情報通信の分野を中心に、これまで36回にわたり議論を進めてまいりました。
当団体の金子訓隆代表理事も、この勉強会には第1回目から関わっており、事務局として勉強会の運営に携わっています。今回で37回目の開催。
山本博司参議院議員が、7月末で国会議員をご勇退されるので、国会議員としては最後の勉強会の開催となりました。
なお、第37回目はリモートも含め70名近い方々が参加いただきました。
以下が本開催の式次第です。
[1]「あいさつ:3期18年間をふりかえり」山本博司 / 参議院議員
[2]「社会全体のデジタル化とAIの利活用について」 奥田直彦 / デジタル庁 審議官
[3]「教育の情報化における生成AIの利活用について」上松恵理子/ 新潟リハビリテーション大学 特任教授
今回は[3]「教育の情報化における生成AIの利活用について」上松恵理子 新潟リハビリテーション大学特任教授のご講演を要約します。

第37回Bluesky勉強会における上松恵理子 新潟リハビリテーション大学 特任教授のご講演
上松恵理子准教授の講演は、「教育の情報化における生成AIの利活用」について、教育分野でのAI活用の進歩とその影響を紹介するものでした。講演の内容は、主に海外の事例と日本の教育現場における課題を中心に進められました。
●海外の教育事例
上松准教授は、海外の教育における生成AIの利活用について紹介し、特にヨーロッパやシンガポール、デンマークの教育現場でのAIの導入状況を説明しました。シンガポールでは、GPT技術を用いてテストや授業内容の改善が進められており、デンマークではスマートフォンを持ち込んでのテストが認められるなど、AIやICTを使った新しい教育スタイルが普及しています。また、フィンランドやオーストラリアでも、情報教育の授業が小学校から始まり、AIリテラシーを学ぶ機会が提供されています。
●日本の教育における課題
日本の教育現場では、AIの活用が遅れていることが問題として挙げられました。特に、小中学校での情報教育が不足しており、高校でようやく必修となる情報教育は遅れた対応だと指摘されています。上松准教授は、日本でもAI教育を積極的に導入する必要性を訴え、AI時代に必要なスキルとしてプログラミングや情報リテラシー、非認知能力の育成を挙げました。
●AI時代における教育の変化
AIの発展により、教育の内容と方法は大きく変化しています。上松准教授は、AI時代において重要なのは「非認知能力」(感情の管理、問題解決能力、社会性など)を育むことだと述べています。これは、AIが進化しても人間の感覚や創造力には限界があり、人間にしかできない分野が必ず残るためです。また、AIの使い方についても、丸投げするのではなく、AIと対話しながら学びを深めることが重要だと強調しました。
●AIリテラシーと倫理
AIを効果的に活用するためには、AIリテラシーが欠かせません。上松准教授は、AIのリスクとして「使わないこと」「AIについて理解しないこと」を挙げ、AIリテラシー教育が必要だと述べました。AIがどのように動作し、どのように社会に影響を与えるのかを理解することが、教育現場でも求められるとしています。また、AIの使用における倫理的な問題にも言及し、AIの誤用を防ぐための指針を設ける必要性を訴えました。
●日本と海外の教育格差
上松准教授は、日本における教育の格差問題についても触れ、特にAI教育に関して、先進国の中でも遅れている日本の現状に危機感を抱いています。海外ではAIリテラシー教育が進んでおり、企業や社会においてもAIを使いこなせる人材の需要が高まっています。しかし、日本ではまだ多くの企業がAIを使っていない状況であり、これが競争力の低下につながる可能性があることを指摘しました。
●生成AIの教育活用事例
上松准教授は、生成AIを教育でどのように活用するかについて、いくつかの実践例を紹介しました。例えば、AIが学習者の成績やデータを分析し、個別に最適な学習プランを作成するシステムがすでに導入されていることを述べました。また、AIを活用することで、個別指導が可能になり、教師が生徒の進捗をリアルタイムで把握できるようになり、教育の質が向上すると期待されています。
●非認知能力とAI教育
AI時代に必要とされるスキルの一つに非認知能力があると上松准教授は強調しました。非認知能力とは、感情の管理やコミュニケーション能力、社会的な適応力など、学力テストでは測れない能力です。これらの能力を育成することが、AI技術の発展とともに求められています。上松准教授は、AIがどれだけ進化しても、非認知能力は人間ならではの強みであり、教育において重要な役割を果たすと述べました。
●AIと教育の未来
上松准教授は、AIを効果的に活用するためには、教育機関だけでなく、企業や政府も連携して、教育の未来を形作っていく必要があると訴えました。特に、企業がAIを使いこなせる人材を育成することが、未来の社会において競争力を高める鍵であり、そのために教育機関もAI技術を取り入れたカリキュラムを提供すべきだと提言しています。
●結論
上松准教授の講演は、AI時代における教育の変化、特に生成AIをどのように活用していくかについて、国内外の事例を交えて非常に具体的で実践的な視点で語られました。今後の教育改革において、AIリテラシーの向上、非認知能力の育成、そしてAI技術の適切な活用が重要であり、教育現場でのAIの導入を積極的に進めるべきであるとのメッセージが強調されました。