【視察報告】「デジタル就労支援センターKAMAKURA」を訪問:鎌倉市
先日25日、あいにくの雨模様ではありましたが、参議院議員の山本博司氏、そして元厚労省の小野寺徳子氏らと共に、鎌倉市が取り組む非常に先進的な就労支援の現場を視察してまいりました。
今回の視察で感じたことや活動の内容をご報告させていただきます。
【視察報告】「デジタル就労支援センターKAMAKURA」を訪ねて
今回訪れたのは、鎌倉市がVALT JAPAN(株)に委託して運営している**「鎌倉市就労困難者特化型BPO事業」**の拠点です。
障がいをお持ちの方や、ひきこもり状態にある方々が、デジタル技術を活用してどのように社会とつながり、自立への道を歩んでいるのか。その最前線を拝見しました。
視察の同行メンバー
今回は、官・民・政の垣根を越えた専門的な視点を持つ方々とご一緒させていただきました。
- 山本博司 前参議院議員
- 小野寺徳子 氏(元厚労省障害者雇用対策課長・元福岡労働局長)
- 小野貴也 社長(VALT JAPAN株式会社 代表取締役)
- 上原大祐 氏(VALT JAPAN株式会社DEI推進責任者:パラリンピック銀メダリスト)
- 水上たけし 鎌倉市議会議員
また、鎌倉市からは鷲尾健康福祉部長、寺山障害福祉課長にも同席いただき、自治体としての熱意を直接伺うことができました。
支援モデルの核:デジタル×在宅・通所のハイブリッド
2022年10月にスタートしたこの事業は、単なる「就労支援」に留まらない、非常に合理的な仕組みで運用されています。
運営のポイント
- 多様な働き方の保障: 通所14名に対し、在宅が26名。外に出ることが困難な「ひきこもり」の方々(全体の1/3)にとっても、パソコンを通じた仕事が大きな「社会との接点」になっています。
- BPO(業務委託)モデル: 全国の企業から受注した仕事を、センターが適切に切り出し。利用者のスキルに合わせて提供されています。
- 「稼ぐ」ことへのこだわり: 最低賃金を保障しており、労働としての対価がしっかり支払われる点が、利用者の自己肯定感に直結していると感じました。
注目すべき成果
定員50名に対し、現在約40名が利用。特筆すべきは、これまでの登録者94名のうち、2割が一般雇用に結びついているという実績です。これは就労困難者支援において、驚異的な数字と言えるでしょう。
私たちが日々向き合っている発達障がいや支援を必要とする子どもたちの「未来の選択肢」として、このデジタル就労の形は非常に大きな希望になります。
「場所に縛られず、スキルを活かして適正な対価を得る」
この当たり前のような仕組みを、自治体(鎌倉市)と民間企業(VALT JAPAN)がタッグを組んで実現している点は、他県や他自治体にとっても極めて重要な先駆的事例です。
視察の最後には、同じフロアにある就労継続支援A型事業所も見学させていただきました。障がいの特性や状態に合わせ、シームレスに支援がつながっていく環境の重要性を改めて痛感した一日でした。
貴重な機会をいただいた皆様、そして現場で丁寧にご説明くださった鎌田奈緒美さんに心より感謝申し上げます。
1. デジタル就労支援センターKAMAKURAの概要と理念
「デジタル就労支援センターKAMAKURA」は、従来の就労継続支援(A型・B型)とは一線を画す、鎌倉市独自の「障害者等就労困難者活躍支援事業」として運営されています 。
支援の主眼と柔軟な働き方
- パフォーマンス重視の支援: 生活リズムの改善を前提とするのではなく、個々のワーカーが最も力を発揮できる時間帯や曜日に、短時間であってもそのスキルを活かすことに主眼を置いています 。
- 多様な選択肢の提示: 通院や体調に合わせた「昼からの稼働」や「在宅勤務」など、個人の状況に応じた柔軟な働き方を選択可能です 。
- 学歴・職歴不問: 過去の経歴ではなく、「働きたい」という意思(内発的動機)と、現在発揮できるスキルを重視して受け入れを行っています 。
対象者と体制
- 対象: 障害のある方、および「ひきこもり状態」にある方です 。特にひきこもり支援については、2022年10月からこの事業の重要な柱として位置づけられています 。
- 専門スタッフ: 社会福祉士や精神保健福祉士を含む5名のスタッフが、経済性と福祉的配慮の両立を図りながら運営しています 。
2. 具体的業務内容と「出島」の役割
当センターは、VALT JAPANが民間企業から受託した実業務を、鎌倉市のワーカー(登録者)へ分配するプラットフォームとして機能しています 。
- 業務の種類:
- 情報収集: 指定項目に沿った企業リストの作成やニュース記事の収集 。
- データ入力: クラウドソフトを使用した領収書・請求書のデータ化や、税額の確認・入力業務 。
- 専門業務: 過去の学習経験や前職のスキルを活かした個別案件への着手 。
- 品質の担保: スタッフがクライアントへの納期、品質、量を責任を持って管理し、チームとして業務を完遂する体制を構築しています 。
- 報酬形態: 雇用契約ではなく「業務委託契約」を基本としており、実際に稼働した分に対する対価(時給換算での支払いが可能になるような案件受注)が支払われます 。+2
3. 鎌倉市による先進的な取り組み
鎌倉市は、市長のマニフェストに掲げられた「障害者2000人雇用」の一環として、本事業を強力に推進しています 。
行政のバックアップと予算
- 予算規模: 年間約3,200万円の市単独予算を確保し、センターの運営を支えています 。
- 重層的な支援体制: 相談窓口である「輝HIKARIサポートセンター」や社会福祉協議会と連携し、就労準備支援から居場所づくりまで、多角的なサポートネットワークを構築しています 。
- 実態調査の活用: 2023年(令和5年)1月時点の調査に基づき、市内のひきこもり推計人数(1,866名)を把握した上で、適切なアウトリーチを検討しています 。
独自の「居場所」と「ステップアップ」
- 坂の下の居場所: 海岸沿いの空きスペースを活用し、まずは外に出ることに慣れるための「居場所づくり」を先行して実施。地域住民との交流や軽作業を通じて、就労へのハードルを段階的に下げています 。
- 一般就労へのブリッジング: センターでの経験を通じて自信を取り戻し、これまでに20数名が一般就労へと羽ばたいています 。
4. 質疑応答のハイライト
後半の質疑応答では、運営の実態や今後の課題について具体的な数字が示されました。
- 登録者の内訳: 現在の登録者は約40〜45名程度で、そのうち約3分の1が元ひきこもり状態の方、3分の2が障害(その9割以上が精神障害)のある方です 。
- 年齢層: 20代から40代が中心となっています 。
- 他自治体からの注目: 2025年度(令和6年度)には、東京都墨田区、世田谷区、八王子市、京都府、静岡県磐田市、熊本県合志市など、全国から10件近い視察を受け入れており、モデルケースとしての関心の高さが伺えます 。
- 生産性のコントロール: 大規模な案件で納期が逼迫した際は、VALT JAPANが提携する全国の他の事業所と連携して業務を分担し、ワーカーに過度な負担をかけないよう調整しています 。
- 相談支援との連携: 2ヶ月に1回、地域の相談支援専門員との連絡会を実施し、事例検討を通じて適切な支援のタイミングを共有しています 。
5. 本取り組みの意義とアピールポイント
「デジタル就労支援センターKAMAKURA」の最大の特徴は、「就労」を福祉的な保護の枠組みから解き放ち、純粋な経済活動(ビジネス)として再定義している点にあります。
- デジタルスキルの社会実装: ITを活用することで、場所や時間に縛られない「現代の新しい働き方」を就労困難層に提供しています。
- 自己肯定感の回復: 「自分がやった仕事が誰かの役に立っている」という民間企業の直接的なフィードバックが、ワーカーの強い自信へと繋がっています 。
- 行政の柔軟性: 従来の制度に当てはめるのではなく、民間企業(VALT JAPAN)のノウハウを最大限に活用し、市の独自予算で「隙間を埋める支援」を実現している点は、他自治体にとって非常に高い先駆性を持っています。








