埼玉県内における地域生活支援拠点等の取り組みと課題について:総括
23日夜、当団体が主催して行われた埼玉県内における地域生活支援拠点等の取り組みと課題について」と題した政治学習会を開催しました。
式次第は以下の通り
・主催者挨拶/金子代表理事
・開会のご挨拶及び地域生活支援拠点等に関する行政説明/山本博司参議院議員
・埼玉県内における地域生活支援拠点等の取り組みと課題について」
・社会福祉法人 昴 丹羽彩文 理事長
・社会福祉法人じりつ 岩上洋一 理事長
・「さいたま市内における地域で生活する課題と行政への提案」/社会福祉法人 埼玉福祉事業協会 髙澤守 事務局長
・参加された3名の国会議員:矢倉克夫氏・宮崎勝氏・高橋次郎氏(参議院議員)からコメントとご挨拶
以下は、2025年2月23日に武蔵浦和コミュニティーセンターで開催された、特定非営利活動法人輝 HIKARI主催の政治学習会「埼玉県内における地域生活支援拠点の取り組みと課題」における講演・発言の内容を、時系列に沿って発言者ごとに整理し、主要なテーマに絞って要約したものである。

1. 輝HIKARI金子代表理事(司会・進行)
(1)趣旨説明と司会進行
- 背景
輝HIKARIの代表として、本勉強会の企画意図を説明。自身も発達障害のある子の親として、親なきあとを見据えた「地域生活支援拠点」の強化を切望している。 - 登壇者紹介
山本参議院議員、社会福祉法人昴の丹羽理事長、社会福祉法人じりつの岩上理事長、埼玉福祉事業協会高澤事務局長らを招き、各地域の取り組みや課題を共有する場とする。 - 本日の進め方
まず山本議員が国の政策動向を話し、続いて昴・じりつの両理事長が具体事例を紹介。最後に埼玉の入所施設側からの視点も含め、意見を交流する流れを案内。

2. 山本博司参議院議員
(1)本日のテーマと趣旨
- 感謝と導入
埼玉県内における地域生活支援拠点の取り組みと課題を議題とし、多忙ななか参加者や関係者に深く感謝。埼玉の福祉事業協会の関係者も招き、具体的事例を交えて進める意図を述べる。 - 自身の経歴と原点
四国愛媛県出身。IBM勤務を経て2007年に参議院議員に初当選し、現在3期目。長女が知的障害と自閉症を抱えた経験から、障害福祉を政治で支えたいと決意した。参院議員として18年の間に障害者関連法を中心に27本の法整備に関わってきた。
(2)障害福祉の拡充と課題
- 法整備の成果
障害者自立支援法(2006年施行)以降、障害福祉予算は6,000億円から約4兆円規模に増大。事業所数や利用者数、従事者数も大幅に増加。グループホーム利用者や就労系サービス利用者も拡大している。 - 残る課題
依然として人手不足・処遇改善や、地域移行のさらなる推進などが必要。身体・知的・精神を合わせると900万人を超える潜在的な障害当事者がいるが、支援の地域格差も大きい。
(3)地域生活支援拠点の必要性
- 法改正と意義
2022年の障害者総合支援法改正で、地域生活支援拠点の整備を市町村に努力義務化。親なきあと等を見据えた緊急支援・短期入所・専門的な人材育成など、五つの機能を拠点に集約し、重度化・高齢化する障害当事者の安心を支える。 - 今後の方向性
各自治体が「形だけ」でなく、コーディネーターを中心に実効性あるネットワークづくりをする必要がある。特に埼玉県ではまだ整備度合いにばらつきがあるため、公明党の国・県・市町村ネットワークを活かして取り組み強化を訴える。

3. 丹羽 理事長(社会福祉法人昴)
(1)自己紹介と法人概要
- 経歴と現状
1999年に昴へ入職。相談支援専門員や法人経営に携わり、2021年より理事長を務める。東松山市・深谷市などを中心に診療所やグループホーム9カ所、通所施設4カ所を運営。ネットワーク型の地域生活支援拠点を強化中。 - 全国的な活動
全国地域生活支援ネットワークの事務局長を兼任し、厚労省の社会保障審議会障害者部会の委員として政策提言にも関わる。国連障害者権利条約の総括所見や国内法改正の動向に注目している。
(2)国連障害者権利条約と国内法改正
- 国連による勧告
施設入所を廃止して地域生活への移行を促進すべきとの強い要請(総括所見)があり、日本はこれに応える必要がある。 - 国内の動き
社会保障審議会障害者部会・当事者団体が協議し、障害者総合支援法改正では地域生活支援拠点のコーディネーター配置や、全ての入所者の意思確認を行う方向が示された。 - 地域生活支援拠点等の報酬改定
緊急時対応だけでなく、「平時の支援」で暮らしの土台を整え、必要に応じて医療や施設利用とも連携する。これを実現するには拠点コーディネーターの存在が鍵となる。
(3)埼玉県や法人としての取り組み
- 入所施設と地域の連動
現状、埼玉県では入所施設の新設が続き、世界的な脱施設の潮流と逆行しかねない。地域移行には、本人の意思確認と選択を尊重した仕組みが欠かせない。 - 具体的事例(東松山市)
コーディネーターを配置し、緊急時・平時・より良い暮らしのステップアップを一体で考える。地域が支えるためのネットワーク作りや啓発を進めている。 - メッセージ
法制度や報酬改定に合わせた実践をさらに深め、施設から地域へ円滑に移行する仕組みを創る。そのために県議会・市議会と連携を図りたい。

4. 岩上 理事長(社会福祉法人じつり)
(1)自己紹介と地域連携
- 経歴
元々は埼玉県職員として精神保健領域に従事。民間でモデルを作るために退職し、社会福祉法人じりつを設立。宮代町を拠点に杉戸町や蓮田市など三市二町に基幹相談支援センターと地域生活支援拠点を運営。 - 全国的な政策参加
内閣府障害者政策委員会委員、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの委員長などを務める。メンタルヘルスを含む包括的支援体制の重要性を訴える。
(2)地域生活支援拠点の具体事例
- 事例紹介
- 高齢の親が急に倒れたケース:事前の訪問調査や体験利用を通じて早期に施設受け入れを調整。
- 通所施設で弁当の変化に気づくケース:通所スタッフの気づき→拠点コーディネーター介入→家族支援→暮らしの再構築。
- 拠点の役割
緊急時支援と平時の予防的支援の両輪が大事。コーディネーターは具体的なケース対応とともに、地域の体制整備にも動く。個別支援の累積を協議会で共有し、行政が予算や施策を立案できるよう情報をまとめる。
(3)埼玉県の現状と課題
- 県と国の方向性の乖離
施設拡大や公費負担の拡大(精神医療費助成など)など、世界潮流とは逆行する動き。限られた財源を本当に必要な領域、たとえば子どもの精神医療体制拡充などに振り向けるべきだと訴える。 - 提言
県や市町村が「総合窓口をつくる」だけで終わらないよう、各担当課をつなぐ司令塔を明確にし、保健と福祉の連携を強化すべき。公明党の議員には、国の方向性を踏まえた上で県行政をリードしてほしい。

5. 高澤 事務局長(社会福祉法人 埼玉福祉事業協会)
(1)入所施設側の視点
- 組織概要
埼玉市西区にある杉の子学園・ゆずり葉・あかしあの森など、入所支援とショートステイ、通所就労(A型・B型)を運営し、売上の15%が就労による収入という大規模法人。 - 地域連携とのギャップ
地域生活支援拠点を推進する立場にいたが、入所施設へ転じてみると、施設側も就労を含め高い機能を地域に開放したい思いがある。だが行政や地域からの要望があまり来ず、持て余している部分もある。
(2)入所と地域の循環をつくる
- 真の地域課題化
障害者の課題を「地域課題」にするとは、行政が責任を放棄して住民任せにするのではなく、行政が司令塔として責任を負いながら市民と協力すること。 - 循環する福祉
入所を一方的な最終ゴールにせず、重度の人も地域に復帰できるようにするなど、本人の意思が反映される仕組みが必要。入所の良い面を上手く活かしつつ、地域生活と両立させるためにさらに連携したい。

6. 国会議員からのコメント
(1)矢倉克夫 参議院議員
- 潜在的なニーズの大きさ
施設か地域かという二者択一ではなく、一人ひとりが最適な形を選べるよう、地域生活支援拠点が緩やかな循環をもたらすことが重要。 - 公明党の役割
国・県・市町村の連携を推進し、埼玉県の現場での意見を国に届ける体制を強化したい。
(2)宮崎勝 参議院議員
- 親なきあとへの関心
70代の親が30代の障害のある子を抱えており、強い不安がある事例を最近受け止めた。地域生活支援拠点の整備が切実に求められている。 - 今後の取り組み
施設から地域への多様な選択肢づくりを目指す法改正をしっかり学び、埼玉県の状況を改善へつなげたい。
(3)高橋次郎 参議院議員
- 就任後の学習過程
議員に就任して間もなく、障害福祉について現在勉強中。支援拠点の取り組みは非常に示唆に富んでいる。 - 決意表明
今日得られた知見を基に、党ネットワークを活かし、課題の解決や法整備に貢献したい。
7. クロージング
- 今後の連絡体制
参加者・議員の名刺交換。継続的に連携を図る予定。本日の学びを各地域で具体化できるよう地方議員・国会議員と連絡を取り合う。 - まとめと解散
講演会・質疑応答を通し、地域生活支援拠点の具体的内容や入所施設との連動、埼玉県の動向、法改正のポイントなどを共有できた。今後はさらなる実装に向け、各方面での連携が期待される。
【総括】
本勉強会は、障害福祉の世界潮流である「施設から地域へ」という流れや、障害者総合支援法改正によって整備が求められる地域生活支援拠点の現状・課題を、国や自治体、現場事業所の視点を一堂に集めて議論したものである。障害のある人が自分らしく生き生きと暮らすには、コーディネーターを中心とした「平時の支援」と「緊急時の対応」を組み合わせ、必要に応じて施設や医療と連携する「循環型の支援モデル」が不可欠だという認識が示された。
一方、埼玉県内では施設入所の新設傾向が続き、国連権利条約の求める脱施設の流れと齟齬が生じている。このままでは財源や人材の有効活用に支障をきたし、より支援を要する人に十分行き届かない恐れがあることも指摘された。
結論として、行政窓口が丸投げするのではなく、市町村の主管課が責任をもって相談を受け、基幹相談支援センターや拠点コーディネーターと連携しながら、予防的視点で訪問調査や意思決定支援を進める必要がある。さらに当事者や家族・事業所・地域住民が一緒になって課題を分かち合う「地域課題化」がポイントとなる。公明党議員も国・県・市町村をまたいだネットワークを活用し、より実効性のある政策提言や予算確保に取り組むことを誓い、会は終了した。
参加者一覧
○福祉団体ご参加の方々
(社福)昴さま/(社福)じりつさま/(社福)埼玉福祉事業協会さま、その他
○行政側の方々
・山本博司参議院議員
・矢倉克夫参議院議員(公明党埼玉県本部代表)
・宮崎勝参議院議員
・高橋次郎参議院議員
以下、埼玉県内の地方議員の方々(地域順不同)
○県議会議員:小早川一博さま
○さいたま市議会議員:齊藤健一さま/照喜納弘志さま/尾上貴明さま
○川口市議会議員:江袋正敬さま
○松伏町議会議員:川上力さま/村上真由美さま
○宮代町議会議員:泉伸一郎さま/小島あけみさま
○白岡市議会議員:菱沼あゆ美さま/中山広子さま
○上尾市議会議員:小高進さま
○熊谷市議会議員:江田大助さま
○東松山市議会議員:大山義一さま/田中二美江さま/石川和良さま
○秩父市議会議員:本橋貢さま
○寄居町議会議員:鈴木詠子さま
○横瀬町議会議員:宮原みさ子さま
○神川町議会議員:赤羽奈保子さま
○本庄市議会議員:清水静子 さま
○深谷市議会議員:坂本博さま
○鴻巣市議会議員:潮田幸子さま
○志木市議会議員:阿部竜一さま
○狭山市議会議員:船川秀子さま
○和光市議会議員:宮澤啓二さま
(その他、若干名未確認の市議会議員の方が参加しております)
たくさんの議員の方々にご参加頂きましたことを、輝HIKARI職員一同、心より御礼申し上げます。
