山本博司前参議院議員と共に、リニエグループ本社を訪問いたしました:大阪市
12月1日の夕方、山本博司前参議院議員に同行させていただき、大阪市内にある(株)リニエL本社を訪問いたしました。

地域リハビリテーションの最前線で活躍される「リニエグループ」の皆様、そして有識者の先生方を交え、障がい児支援の現場の実情や課題について、非常に濃密な意見交換の機会をいただきました。
専門家集団との対話
今回は、リニエグループの経営陣の皆様に加え、アカデミアからも素晴らしい先生方がご参加くださいました。
【ご対応いただいた皆様】
- リニエグループ幹部の皆様: (株)リニエ 谷隆博社長、(株)三輪書店 青山智社長(リニエR社長)、簑島祥取締役、藤田康雄取締役、長瀬正幸サービス本部本部長、小林英利奈小児施設部門責任者、丸山梨恵所長、米澤沙樹広報推進課
- 有識者: 学校法人 高知健康科学大学 宮口英樹学長、京都橘大学 高畑進一教授
- 有識者:高知健康科学大学 宮口英樹学長
「地域リハビリテーション」のモデルケースとして
リニエグループ様は、医療専門書の老舗である株式会社三輪書店と4つのサービス企業が連携し、2012年に大阪で始動された企業グループです。
説明を伺い、特に感銘を受けたのはその専門性と包括的な支援体制です。 訪問看護やリハビリ、通所介護にとどまらず、我々輝HIKARIの活動領域とも重なる「児童発達支援」や「放課後等デイサービス」、「保育所等訪問支援」など、地域に根差した幅広い事業を展開されています。
- 事業規模: 年間利用者数 約3万人(うち小児約4,000人)
- 体制: 社員数285名、20事業所
これだけの規模で、高齢者から小児まで切れ目のない支援を行われている実績に、改めて大きな学びをいただきました。
現場の課題を共有する「熱い議論」
16時から約2時間にわたり、山本議員を交えて行われた議論は、まさに今の福祉現場が直面している課題そのものでした。
特に以下のテーマについては、お互いの知見を出し合い、深く掘り下げることができました。
- 医療的ケア児への支援体制
- 発達障がいや不登校へのアプローチ
- 境界知能(ボーダー)の子どもたちへの支援
- 若年性パーキンソン病支援
現場を知る者同士だからこそ共有できる悩みや、制度の狭間にある課題について、山本議員も熱心に耳を傾けてくださいました。政策決定の場にいらっしゃる山本議員に、直接現場の生の声を届けることができたのは、非常に有意義な時間でした。
今後の連携に向けて
議論の後は懇親会にも参加させていただき、約3時間にわたり皆様と交流を深めることができました。 机上の空論ではない、人と人との繋がりから生まれる「地域共生社会」の実現に向けて、リニエグループ様とは今後もしっかりと連携していきたいと強く感じております。
最後になりますが、今回の貴重なご縁を繋いでくださった京都橘大学の高畑進一教授、そしてご多忙の中、同行の機会をくださった山本博司議員に心より感謝申し上げます。

以下は懇談内容について要約した資料です。
ご提示いただいた会話ログに基づき、リニエL(および関連グループ)の事業内容、訪問リハビリテーションの課題、不登校児支援、ひきこもり支援、そしてそれらを取り巻く政治・行政の動きについて、詳細な要約・報告を作成いたしました。
リニエL・山本博司参議院議員・金子訓隆代表・学識経験者による懇談会 詳細要約レポート
1. はじめに:懇談会の概要と参加者
本懇談会は、リニエLの事業説明から始まり、医療的ケア児支援、発達障害、不登校、ひきこもり、そして境界知能(ボーダー)の人々への支援へと多岐にわたりました。
2. リニエLの事業の取り組みと組織概要
2-1. 組織と事業規模
リニエLは、医学書出版社である「三輪書店」をグループ母体とし、2012年に大阪で設立されました。現在14年目を迎え、大阪府、京都府、滋賀県、兵庫県、広島県へと事業エリアを拡大しています。
- 社員数:285名(うち専門職が200名弱)。
- 事業所数:20カ所以上。
- 売上規模:約16億円(前期)。
- 利用者数:年間約3万人(高齢者約2.5万人、小児約4,000人)。0歳から100歳超まで、難病や小児を含めた幅広い層を在宅で支えています。
2-2. 主な展開事業
- 訪問看護・リハビリテーション
- 全12ステーションを展開。小児から高齢者まで対応し、特に小児リハビリテーションの潜在的ニーズに応える体制を構築しています。
- 西宮ステーションの開設(2024年8月):兵庫県西宮市・宝塚市エリアは0〜14歳人口の割合が高く、小児医療に注力している地域である一方、小児特化の訪問看護が不足していました。これに対応するため、小児経験豊富な看護師・作業療法士(OT)を配置した新ステーションを開設しました。ここでは医療的ケア児だけでなく、発達障害や不登校児への介入も増加傾向にあります。
- 通所介護(デイサービス)
- パーキンソン病特化型デイサービス:大阪の岸和田と泉佐野に2カ所展開。一般的なデイサービスでは認知症の方と混在することで「自分に合わない」と感じるパーキンソン病患者等の受け皿として機能しています。運動機能訓練や、専門的なプログラム(卓球やダーツなど楽しみながら体を動かす活動)を提供しています。
- 生活機能ステップアップ型:生活機能の維持・向上を目的とした機能訓練を実施。
- 児童発達支援・放課後等デイサービス
- 5カ所の事業所を展開。重度心身障害児や医療的ケア児の受け入れに加え、不登校支援や学習支援も行っています。
- 自費事業「コグトレ塾」:宮口教授が提唱する認知機能強化トレーニング(コグトレ)を提供する学習塾を運営。受給者証を持たない境界知能(グレーゾーン)の子どもたちへの支援として、大阪・吹田などで展開しています。
- 保育所等訪問支援
- 大阪市西区を中心に、保育園・幼稚園・小学校・中学校・支援学校など約50カ所へ訪問支援員(OTなど)を派遣。子どもの集団生活への適応を支援しています。
- 東京では先行して「学校作業療法」としての介入が進んでいますが、リニエLでも訪問看護と連携し、家庭と学校の両面から生活全体を支える仕組みづくりを目指しています。
- 人材育成と採用戦略(リブランディング)
- 小児リハビリに対応できる療法士が市場に少ないという課題に対し、三輪書店グループの教育ノウハウを活かした独自の教育システムを構築。未経験者でも小児領域に対応できる人材を育成しています。
- 採用難(特に看護師やPT/OT)に対応するため、約3,000万〜5,000万円を投じてホームページの刷新やリブランディングを実施。広報誌の発行やInstagramでの発信を強化し、三輪書店のブランド力を背景に、質の高い人材確保に成功しています。
3. 訪問リハビリテーション・医療的ケア児支援における課題
3-1. 医療的ケア児と重症心身障害児の制度的狭間
現場からは、重症心身障害児(重心)を対象とした通所支援事業における経営的な難しさが提起されました。
- キャンセルによる赤字リスク:重心型の放課後等デイサービス等は、看護師や専門職の手厚い配置が義務付けられていますが、利用者の体調不良による当日キャンセルが発生すると、報酬(出来高払い)が得られず即座に赤字になります。「欠席時対応加算」はあるものの、書類作成の手間が膨大である割に報酬単価が低く、経営を圧迫しています。
- 制度の混乱:「医療的ケア児」という言葉が先行し、従来の「重症心身障害児」との区分けや、行政側の理解不足による混乱が現場で生じています。利用者一人ひとりの状態(重心なのか、動ける医療的ケア児なのか等)に応じた柔軟なサービス提供や人員配置が認められにくい現状があります。
3-2. 政治側からの応答と今後の法改正
山本氏より、現在進行中の「医療的ケア児支援法」の改正および「障害者総合支援法」の見直しにおいて、以下の点が論点となっていることが共有されました。
- 定義の見直し:現在約2万人の医療的ケア児に対し、支援法により学校への看護師配置などは進みました(300人→5,000人規模へ拡大)。しかし、重心の方々が支援の網から漏れているのではないかという懸念があり、法改正の議論の中で「重心」も含めた定義の再検討や、成人した医療的ケア者の支援についても検討が進められています。
- 財源の確保:手厚い支援が必要な重度の子供たちに十分な財源が行き渡るよう、財務省との折衝を含め、制度設計の見直しを図る方針です。
3-3. 5歳児健診と療育の質の担保
- 5歳児健診への参画:リニエLでは一部の自治体(東大阪市など)でOTが5歳児健診に参画しています。発達障害の早期発見において重要な役割を果たしていますが、自治体による実施状況の格差(医師不足や予算の問題)が課題です。
- 「療育」の定義:青山氏や宮口教授より、「療育」という言葉が教育・医療・福祉の中で曖昧に使われている現状が指摘されました。エビデンスに基づいた医療的アプローチと、経験則に基づく教育的アプローチが混在しており、国としての明確な定義や質の担保(評価基準)が定まっていないことが、放課後等デイサービスの質のばらつきの一因となっているとの議論がなされました。
4. 不登校児への支援の取り組み
4-1. 具体的な支援事例とアプローチ
リニエLの丸山氏より、不登校支援の事例が報告されました。
- 事例:小学3年生から登校しぶりがあり、4年生で完全不登校になった児童。
- 介入プロセス:
- 信頼関係の構築:当初は月1回程度の訪問から開始。本人の興味関心(好きなこと)を出発点に、OTが関わりを持ちました。
- スモールステップ:無理に学校へ戻すのではなく、本人のペースを尊重。自己効力感を高める関わりを継続。
- 活動範囲の拡大:家庭内から、徐々に家庭外(フリースクールや集団療育)へと活動の場を広げ、現在では月10回程度の利用に至り、中学校進学へ前向きな姿勢を見せるようになりました。
- 成果:この取り組みを開始して1年半で、利用者は1名から7名へ、月間訪問件数は4件から46件へと急増しており、地域における潜在ニーズの高さが浮き彫りになりました。
4-2. 訪問看護ステーションからの介入
西宮ステーション等の事例として、不登校児に対して訪問看護(精神科訪問看護の枠組み等)やリハビリ職が介入するケースが増えています。
- 役割:家から出られない子供に対し、OTが訪問して外出の準備を一緒に行ったり、放課後等デイサービスに通うための付き添いや橋渡しを行ったりしています。
- 家族支援:不登校の背景には、親御さん自身が精神的な課題(うつ等)を抱えているケース(母子支援の必要性)や、生活リズムの乱れ(親が起きられないため子も起きられない)がある場合も多く、訪問看護が家族全体を支える役割を担っています。
5. ひきこもり支援・境界知能(ボーダー)への支援
5-1. 「狭間の子供たち」への問題意識
宮口教授より、自身の少年院での勤務経験や研究に基づいた深刻な課題が提起されました。
- 境界知能(IQ70〜84)の問題:知的障害(IQ69以下)の福祉サービス対象にはならず、かつ一般的な社会生活や就労には困難を抱える「境界知能」の人々が、全人口の約14%存在すると言われています。
- 非行との関連:少年院にいる子供たちの多くが、実はこの境界知能や発達障害の傾向を持っており、幼少期に適切な支援を受けられず、学校で挫折し、非行化してしまったケースが多いこと。彼らは「反省以前に、自分のしたことや状況を認知できていない」場合があり、従来の矯正教育だけでは更生が困難です。
- 支援の不在:彼らは福祉の網(障害者手帳や受給者証)にかからないため、公的な支援を受けられず、社会の中で孤立し、最終的にひきこもりや生活困窮、再犯へとつながる「負の連鎖」に陥っています。
5-2. リニエL・宮口教授らのアプローチ
- コグトレ(Cog-Train)の実践:リニエLでは、こうした子供たちに対し、認知機能を高めるトレーニング「コグトレ」を自費事業として提供しています。受給者証取得に抵抗がある保護者にとっての「入り口」としても機能しています。
- 森田療法の応用:宮口教授は現在、不登校やひきこもり支援において、あるがままを受け入れる「森田療法」のアプローチを研究し、東広島市の不登校支援などに適用しようと試みています。
5-3. 全国的な支援モデルと「子ども食堂」の活用
金子氏より、先進的なNPO法人の事例紹介がありました。
- NPO法人さいたまユースサポートネット:不登校やひきこもりの若者(15歳〜39歳)に対し、教育委員会と連携しながら支援を行っています。「不登校」という言葉を表に出さず、生活困窮者支援や学習支援の一環としてアウトリーチを行っています。
- 認定NPO法人キッズドア:学習支援と食事提供(子ども食堂)を組み合わせた活動。「貧困」や「支援」という看板を掲げると当事者が寄り付かないため、「多世代交流」や「学習会」という名目で集め、結果として食事や悩み相談につなげる工夫をしています。
5-4. 8050問題・9060問題と「親亡き後」
山本氏より、ひきこもりの長期化・高齢化に伴う「8050問題(80代の親が50代の子を支える)」が、現在は「9060問題」へと深刻化している現状が語られました。
- 親亡き後の課題:親が亡くなった後、社会との接点を失ったひきこもりの当事者がどのように生きていくか、住居や生活をどう支えるかが喫緊の課題です。
- 法整備の動き:山本氏は、こうした制度の狭間にいる人々のために、公明党のプロジェクトチームで厚労省を巻き込んだ検討を行っており、「高次脳機能障害支援法」の成立(2024年12月見込み)や、その他の法整備を通じて支援体制を構築しようとしています。特に、境界知能や軽度知的障害の人々が性風俗産業に取り込まれたり、犯罪に巻き込まれたりする現状を打破するための法的支援の必要性が強調されました。
6. まとめ
本懇談会では、リニエLが展開する地域密着型のリハビリテーション事業が、単なる機能訓練にとどまらず、制度の狭間に落ちてしまいがちな「医療的ケア児」「不登校児」「境界知能の子供たち」「若年性パーキンソン病患者」といった多様なニーズに対する受け皿として機能し始めていることが確認されました。
一方で、現場の努力だけでは解決できない「報酬制度の構造的欠陥(キャンセル問題など)」「療育の定義と質の担保」「境界知能層への公的支援の欠如」といった課題も浮き彫りになりました。
これに対し、山本博司氏や金子訓隆氏は、国政レベルでの法改正(医療的ケア児支援法改正、高次脳機能障害支援法成立など)や、地方自治体(首長)との連携、先進的なNPO事例の横展開を通じて、これらの課題解決に取り組む姿勢を示しました。特に、「教育・医療・福祉の縦割りを排した連携」と、「既存の制度に乗らない人々をどう支えるか(自費事業やNPO、子ども食堂等の活用)」が、今後の障害福祉および地域共生社会実現の鍵となることで参加者の認識が一致しました。
リニエLとしては、これらの知見やネットワークを活かし、訪問看護・リハビリテーションの枠を超えた包括的な生活支援・地域づくりを今後も推進していく方針です。

