心理検査に関する書籍出版ヒアリング
16日午前、埼玉東萌短期大学の熊上藤子助教が訪問されて、当団体が運営する放課後等デイサービス輝HIKARI上宗岡arと、CoCoRearはぐの両児童発達支援管理責任者と懇談しました。
懇談内容は、今年の夏頃に熊上助教が著書として出版される書籍のヒアリングです。
書籍内容は心理検査について。また保護者の気持ちや児童期の対応等について様々な意見交換を行いました。

1. 診断と心理検査:レッテルから「生きやすさの切符」へ
書籍の主軸となるのは、心理検査や診断をどう家族の人生に活かしていくかという点です。
診断への意識改革: 多くの保護者は「診断=レッテルを貼られる」と不安を抱き、受診を躊躇します 。しかし、診断は「適切なフォローや受給者証を得るためのきっかけ」であり、子供が社会で生きやすくなるための「根拠」であるという意識の転換が必要です 。
心理検査の「翻訳」の重要性: 検査結果の数字や専門用語を伝えるだけでは、保護者の不安は解消されません 。支援者には、検査時の子供の行動観察を含め、日常の様子と照らし合わせて「強みをどう伸ばし、苦手をどう補うか」を具体的にコンサルテーションする役割が求められています 。
2. 家族支援のリアルと「孤立」への警鐘
支援現場の生々しい声から、家族が直面する困難が浮き彫りになりました。
- 家族の孤立: 障害児、特にかんしゃくが激しい場合などは、近隣の祖父母にすら預けることが難しく、母親や父親が育児の中で孤立を深めていく実態があります 。
- 医療・行政現場での温度差: 診断の場において、医師やワーカーが事務的に結果のみを伝え、保護者の「大変さ」に寄り添わないケースが少なくありません 。この「共感の欠如」が、保護者の心理的トラウマとなり、その後の支援の遅れ(先延ばし)に繋がるリスクが指摘されました 。
- きょうだい児への視点: 障害のある子の影に隠れがちな「きょうだい児」の葛藤や、学習面での課題(LD傾向など)にも光を当て、家族全体の支援を検討しています 。
3. 次世代の支援者育成:リカレント教育の可能性
埼玉東萌短期大学との連携を通じ、現場とアカデミアの橋渡しが提案されました。
- 社会人学生(セカンドキャリア)の台頭: 現在、保育士養成課程では30代〜40代の社会人学生が急増しています 。子育て経験をプラスに捉え、必死に学ぶ彼らは成績も優秀で、現場にとって即戦力となる可能性を秘めています 。
- 現場の声を学生へ: 熊上助教は、現場のサービス管理責任者をゼミのゲスト講師として招き、学生に「保護者支援のリアル」や「児発・放デイの社会的役割」を伝える機会を提案しました 。
- 人材不足の解消に向けて: 埼玉県内の保育士が待遇の良い東京都へ流出している現状に対し、セカンドキャリア層の確保と、現場での実践的な学びが、地域福祉を守る鍵となります 。
4. 就労支援と社会包摂:ワークダイバーシティの展望
対談の後半では、子供たちの未来、つまり「出口戦略」としての就労について議論が交わされました。
- 就労継続支援B型の質的向上: 工賃(賃金)の低さが問題視される中、大阪府での新規設置規制などを例に、今後は「質の高い支援」と「適切な生産活動」を行えない事業所は厳しく淘汰される時代に入ります 。
- 「好き」を仕事に繋げる工夫: 鉄道や動物が好きといった子供のこだわりを、単なる「夢」で終わらせず、どのような業務であれば貢献できるかを大人が分解し、職域を創出する努力が必要です 。
- 境界知能と就労困難者支援: 手帳を持てない「境界知能」の方や、ヤングケアラー、不登校児など、既存の制度から漏れがちな人々を包括的に支援する「包摂的就労支援(ワークダイバーシティ)」の重要性が語られました 。

5. 結論と今後の展望
今回の懇談を通じて、「心理検査は子供の人生を豊かにするためのコンパスである」という共通認識が確認されました。
「どんなに現実が厳しくても、声を上げ続け、現場・教育・行政がトライアングルで連携していくことが、子供たちの居場所を守ることになる」
8月頃に出版予定の書籍は、これらの現場の熱量と専門的な知見が凝縮された、保護者にとっても支援者にとっても「希望の物語」となることが期待されます 。


