第1回 障害者雇用サポートセミナー:ビーテックの障害者雇用の取り組み ~未達成企業からの脱出~
1週間前の研修会報告となりますが、令和7年度 第1回 障害者雇用サポートセミナーにおける事例紹介。
株式会社ビーテック生産部係長・根岸和行氏による講演「障害者雇用の取り組みについて ~未達成企業からの脱出~」についてお伝えします。

株式会社ビーテック
株式会社ビーテックは、1984年に株式会社鈴竹のグループ子会社として誕生しました。ガラス容器を製造販売している鈴竹が、得意先への更なるサービスの拡充を図るべく創業した会社です。
以下に、2025年6月13日開催の「令和7年度 障害者雇用サポートセミナー」における埼玉労働局職業対策課による講演「令和7年度 障害者雇用助成金制度について」の内容を要約しました。

株式会社ビーテックの障害者雇用の取り組み ~未達成企業からの脱出~
1.会社概要と障害者雇用の背景
株式会社ビーテックは1984年創業の化粧品OEM製造会社で、本社を坂戸市に置き、三好工場など複数の拠点を展開している。製造現場では人手作業が中心で、障害者雇用の推進は近年の人手不足の課題と直結している。平成30年当時は法定雇用率未達成の状態が続いていたが、危機感を持ち、障害者雇用を本格的に進めることとなった。
2.障害者雇用の基本方針
ビーテックでは障害者を健常者と同じラインで働く「共働型」の雇用スタイルを採用。間接作業や清掃業務に特化させず、化粧品製造の中心業務にも従事してもらっている。重点(充填)や段ボール詰めなどの作業にも取り組むが、検品や最終出荷、責任表示といった重要工程は、現時点では任せていない。
作業補助としては、計量ミスを防ぐ「コンパレーター」機器を導入。これは給付金を活用して設置し、障害者にも健常者にも有効な支援設備として評価されている。
3.障害者雇用の5つの事例紹介
事例① 精神障害のある女性(短時間勤務)
精神障害者を初めて雇用した事例。週5日、9時~14時勤務でスタートし、当初は順調だったが、幻聴的な被害妄想や出勤困難が生じた。相談支援機関と連携し対応を試みたが改善には至らず、退職。退職後、本人から虚偽の欠勤理由(実際は夜間の出会い系活動による睡眠不足)を告白され、雇用側の配慮の重要性を再認識した。
事例② 知的障害(重度)の女性(トライアル雇用)
口数が少なく静かな性格だが、指示は的確にこなす。最初は検査や数量管理が苦手だったが、ライン作業に順応し、現在は安定勤務を継続中。定期面談でも「楽しく働いている」との報告があり、職場での適応が進んでいる。
事例③ 特別支援学校卒業の新卒女性
特別支援学校から初めて新卒採用した例。直接雇用はトライアル雇用ができないため、一度失職後にトライアルを経て正式採用。社会人経験がない状態で入社し、当初は挨拶ができず苦労。班内での「挨拶チェック表」を用いた支援で改善。最初はうまくいかなかった職員とも、ささいな称賛をきっかけに関係が改善された。
事例④ 精神障害(中度)の女性(トライアル経由のフルタイム)
まじめで勤怠も安定。製造工程の多くを習得している。ただしプライベート情報を同僚に共有しすぎる傾向があり、その背景には家庭環境の複雑さ(障害を持つ兄弟、母親の育児放棄的行動)があると推察される。生活面での支援(入浴等)にも連携が求められた。
事例⑤ 精神障害の女性(当初は一般雇用)
最初は一般雇用で入社したが、勤続していく中で本人が適応障害となり、2年前に病院に通院。その後業務に支障が出て支援を求めた。手帳を取得し提出したことで、一般雇用から障害者枠で再雇用。以降は落ち着いて勤務を継続中。
4.取り組みと社内体制
*実習評価表の活用:挨拶、謝罪、礼儀などの社会的行動も評価指標として用いており、行動の背景や課題も分析。 *社内研修の定期実施:サポートセンターや外部専門家を招いた障害理解研修を適時実施。知的・精神・身体・発達障害に対応。
*現場班による見守り型支援:形式的な個別支援よりも、現場全体での見守りを重視。 *新入社員研修:入社初期段階から障害者雇用への理解を深めるプログラムを導入。
5.課題と今後の展望
- 障害のある社員に対する健常者側の理解が不可欠。誤解や不満を防ぐため、定期的な話し合いとミーティングを継続。
- 知的・精神・身体・発達の4種に加え、今後は「ろう者(聴覚障害者)」の雇用にも挑戦していきたい。
- 障害者の特性に応じた作業環境の整備と、合理的配慮の仕組み化を目指す。