長崎大学・岩永竜一郎教授との懇談~発達障害支援~:長崎市

3月21日の午前、長崎の地にて、非常に意義深い対談が実現しました。

今回の懇談は、私たち特定非営利活動法人 輝HIKARIの代表理事・金子訓隆は、株式会社マイクロブレインとして、開発している発達障がい児(特に視覚的な有効性のある)の歯科治療や口腔ケアにおける支援として活用するiPad型アプリケーション「はっするでんたー」の開発者でもあります。

このはっするでんたーの開発にあたり、監修者としてご尽力頂いたご縁もあり、日本における発達障害学の第一人者である長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科の岩永竜一郎教授と、長年障害福祉分野に尽力されてきた山本博司前参議院議員との貴重な意見交換の場となりました。

当日は、シーアイ・パートナーズの家住教志社長(CEO)をはじめとする皆様、そして私たち輝HIKARIの金子代表も同席し、現場・研究・政策の三者が一堂に会する熱のこもった時間となりました。


■ 岩永竜一郎教授:研究者であり、実践者であり、父として

岩永教授は、発達障害学、特に「感覚・運動・行動面」の研究と支援において、日本を代表するエキスパートです。そのプロフィールは多岐にわたり、現在、以下の要職を務められています。

  • 長崎大学 子どもの心の医療・教育センター センター長
  • 日本感覚統合学会 理事
  • 長崎県自閉症協会 副会長

岩永教授の最大の強みは、その深い専門知識に加え、ご自身も自閉スペクトラム症のお子さんを持つ「親」としての視点を併せ持っている点にあります。家族支援の重要性を誰よりも理解されており、その温かな眼差しは、研究成果をいかに家庭や教育現場に還元するかという「実践」に常に向けられています。

著書には、多くの子どもたちや保護者のバイブルとなっている『自閉症スペクトラムの子どもの感覚・運動の問題への理解と支援』や、具体的な遊びを通じた支援を提案する『発達障害の子の「できる」を増やす 遊び・運動・リハビリテーション』などがあり、専門職のみならず多くの家族を支え続けています。


■ 今、私たちが知るべき「発達系作業療法」と「感覚統合」

今回の懇談では、専門的な知見から多角的なお話を伺いました。ここで、キーワードとなった重要な分野について解説します。

1. 感覚統合(Sensory Integration)

私たちは無意識のうちに、五感(視覚・聴覚など)だけでなく、自分の体の位置を感じる「固有受容覚」や、バランスを感じる「前庭覚」など、さまざまな感覚を脳で整理しています。

発達障害のあるお子さんの中には、この感覚の交通整理がうまくいかず、「音に敏感すぎる」「じっとしていられない」といった課題を抱えることがあります。岩永教授が提唱する感覚統合療法は、遊びや活動を通じてこの交通整理を助け、生きづらさを軽減するアプローチです。

2. 発達性協調運動障害(DCD)

「縄跳びが極端に苦手」「階段の昇り降りがぎこちない」「ボタンを留めるのが難しい」。これらは単なる「不器用」ではなく、発達性協調運動障害(DCD)という特性かもしれません。

岩永教授は、このDCDが学習意欲や自己肯定感に与える影響を重視し、リハビリテーション専門職(OT・PT・ST)がどのように介入すべきか、その役割を明確に示されています。

3. ポジティブ行動支援(PBS:Positive Behavior Support)

「問題行動を止める」のではなく、「適切な行動を教え、環境を整える」ことで、子どもも周囲もハッピーになる。これがポジティブ行動支援(PBS)の考え方です。

本人の困り感に寄り添い、成功体験を積み重ねるための具体的な手法について、深い議論が行われました。


■ 懇談の内容:多角的な視点から

意見交換は、多岐にわたるトピックで溢れました。

  • リハビリ専門職の役割: 作業療法士(OT)、理学療法士(PT)、言語聴覚士(ST)が、いかに連携して子どもの生活を支えるか。
  • 家族支援の充実: 孤立しがちな保護者への伴走型支援の必要性。
  • 難聴児支援: 発達障害と感覚の課題が重なる場合のきめ細やかな対応。
  • ASEAN地域への貢献: インドネシアなど、アジア諸国における発達支援の技術移転と連携。

岩永教授からは、「研究で得られた知見を、いかに実際の制度や支援の現場に落とし込んでいくかが重要だ」という力強いお言葉がありました。


■ これからの活動と決意

今回の懇談を通じて、私たち輝HIKARIは、改めて「現場の声を政策に届け、専門知を現場に活かす」という橋渡しの重要性を痛感しました。

この対談は、単なる情報の交換に留まりません。山本前参議院議員を通じて、これらの貴重な意見は今後の国の施策に反映されるよう、道筋が立てられていきます。

岩永教授の「感覚統合」や「DCD」への深い洞察を、私たちの事業所での日々の活動にも取り入れ、お子さん一人ひとりの「できた!」を一つでも多く増やせるよう、スタッフ一同、より一層の努力をしてまいります。

岩永教授、山本前議員、そして同席いただいた皆様、素晴らしい時間をありがとうございました。


輝HIKARIでは、今後も専門家との連携を深め、最新の知見に基づいた支援を提供してまいります。

【関連書籍のご紹介】

岩永教授の知見をより深く知りたい方は、ぜひ以下の書籍もお手に取ってみてください。

  • 『発達障害児への感覚統合療法:その理論と実践』(岩永竜一郎 著)
  • 『不器用な子どもたちへの感覚統合療法』(岩永竜一郎 著)