開会のご挨拶及び地域生活支援拠点等に関する行政説明:山本博司参議院議員
23日夜、当団体が主催して行われた埼玉県内における地域生活支援拠点等の取り組みと課題について」と題した政治学習会を開催しました。
式次第は以下の通り
・主催者挨拶/金子代表理事
・開会のご挨拶及び地域生活支援拠点等に関する行政説明/山本博司参議院議員
・埼玉県内における地域生活支援拠点等の取り組みと課題について」
・社会福祉法人 昴 丹羽彩文 理事長
・社会福祉法人じりつ 岩上洋一 理事長
・「さいたま市内における地域で生活する課題と行政への提案」/社会福祉法人 埼玉福祉事業協会 髙澤守 事務局長
・参加された3名の国会議員:矢倉克夫氏・宮崎勝氏・高橋次郎氏(参議院議員)からコメントとご挨拶
山本博司参議院議員のご挨拶と講演として、「開会のご挨拶及び地域生活支援拠点等に関する行政説明」として20分ほどお話しを頂きました。
その講演内容を要約いたしました。
以下は、山本博司参議院議員が「埼玉県内における地域生活支援拠点の取り組みと課題」に関して講演した内容の要約です。講演では、障害福祉施策の変遷から地域生活支援拠点整備の重要性に至るまで、本人の経験や法整備・予算措置の歴史を踏まえて述べられました。
【1.講演者の自己紹介と障害福祉に携わる原点】
山本氏は四国・愛媛県八幡浜市出身。慶応大学卒業後、IBMに約29年間勤め、大宮勤務で埼玉県を担当した経験もある。2007年に参議院議員となり、3期目(18年目)を迎えている。長女が自閉症を伴う知的障害を持っていたことが政治家を志す大きな原点となり、家族ぐるみの苦労を経て「少しでも恩返しをしたい」という思いを抱き、障害福祉政策の充実に取り組んできた。
【2.法整備と障害福祉分野の予算拡充】
山本氏はこれまで約27本の障害者関連の法整備に関わった。具体的には、障害者自立支援法の改正、障害者差別解消法、発達障害者支援法の改正、バリアフリー法、電話リレーサービスに関する法整備、医療的ケア児支援法などである。近年では「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法」が2022年に成立し、手話の施策推進法や高次脳機能障害支援に関する法整備なども議論を進めている。
障害福祉の予算は平成18年度の6000億円から令和6・7年度では4兆円規模に拡大。利用者数や事業所数も大幅に増え、グループホーム利用者は4万人から18万人超に、障害者の就労者も30万人から64万人へと伸びている。しかし、いまだ待遇面での課題や、精神障害者など特定領域での支援不足など多くの問題が残っている。
【3.障害福祉制度の変遷と地域移行の推進】
戦後、身体・知的・精神の障害が別々の法律で措置されてきた歴史を経て、平成18年の障害者自立支援法により3障害一体の枠組みが生まれた。批判も多かったが、この法律によって国・自治体の障害福祉予算の仕組みが義務的経費化され、事業所やサービス利用者が継続的に増えている。平成24年以降は、障害児の放課後等デイサービスや児童発達支援事業、相談支援の充実などが進められ、さらに多くの人々が制度の恩恵を受けられるようになった。
【4.埼玉県を含む地域での動向】
人口当たりの障害福祉サービス利用者数を都道府県別に比較すると、埼玉はまだ伸びしろがあり、制度をさらに活用しサービスを拡充できる余地があると指摘された。また、補正予算では障害福祉分野の処遇改善、燃料費や食費などの物価高騰対策、施設整備費、DX推進などに多額が計上されており、自治体レベルの取り組みと連動して活用していくことが重要である。事業所の人材確保や報酬増にも直結するため、各種加算や地方交付金の活用を地域で周知徹底する必要がある。
【5.地域生活支援拠点整備の意義】
地域で暮らす障害者の高齢化や重度化、また親亡き後の暮らしへの不安への対応として、地域生活支援拠点が重要視されている。従来から拠点整備は示されてきたが、令和6年度の障害者総合支援法改正で整備の「努力義務化」が進み、各市町村が責任を持って取り組む体制が強化される。
【6.地域生活支援拠点の5つの機能】
1) 24時間対応の相談支援
2) 緊急時の受け入れ(短期入所など)
3) 体験や交流の場の提供
4) 専門人材の研修・育成(医療的ケア、行動障害等の専門支援)
5) 関係機関の連携・協議会などのネットワーク構築
これらを総合的に整備することで、地域移行(入所施設や病院から地域生活への移行)を実現し、障害者が望む場所で暮らせるようにすることが狙いである。しかし、自治体によっては「整備済み」と見なされるものの、実質的にはコーディネーター不足や緊急時受け入れ先の確保が不十分など“形だけ”の拠点も少なくない。そのため実効性の高い拠点運営には、現場に根ざした支援体制を強化する必要がある。
【7.今後の課題と地方議員への期待】
現場が抱える諸課題(処遇改善、人材確保、医療的ケア児・高次脳機能障害・精神障害などへの専門支援の不足など)は多岐にわたる。特に地域生活支援拠点には、親なき後も含め「重度・高齢化する障害者をいかに地域で支えるか」という現実的な課題を解決する責務がある。
地方議員には、国と自治体をつなぐネットワークの要として、1) 法改正や予算情報などの最新施策を地域に周知する、2) 各市町村の地域生活支援拠点を「形だけ」にしないための体制作りを進める、3) 当事者・事業所の声を国に届け、報酬改定や補助金施策に反映させる、といった活動が強く求められる。
山本氏の講演は、障害福祉予算の増大と多様な法整備が進展している一方で、支援の地域格差や現場での課題が依然残る現状を指摘し、今後の制度充実に向けて「地域生活支援拠点」が要となる重要性を強調している。なかでも“親なき後”の不安解消に向けた緊急受け入れや常時の相談窓口の確保、精神障害や医療的ケア等の専門支援の強化などが急務であると語った。最終的には、地方議員や地域事業者が一体となって具体的な体制構築を進めることこそが、共生社会の実現に繋がるという強いメッセージで講演を締めくくっている。