障害者の「稼ぐ力」と企業の壁を考える「アスタネ中浦和」:さいたま市

2026年3月2日、さいたま市にある就労継続支援A型事業所「アスタネ中浦和」を視察いたしました。今回は、山本博司前参議院議員、元厚労省障害者雇用対策課長の小野寺徳子さんと共に、運営母体である株式会社ゼネラルパートナーズ(GP)の東海林恵一部門長から、現場のリアルな課題と可能性について深くお話を伺いました。

今回の視察は、福祉の枠を超えた「ビジネスとしての障害者雇用」の到達点を見せてくれるものでした。

■ 「福祉」の常識を覆す圧倒的な事業性

アスタネの事業モデルは、単なる作業の提供ではありません。障害のある方を「支援対象」ではなく「共に働く仲間」と定義し、徹底した付加価値を追求しています。

  • **販路開拓の執念:東海林さんは、かつて自ら有名店舗に椎茸を抱えて飛び込み、何度も通い詰めてバイヤーとの連絡先を確保し、プレゼンを勝ち取って商流を築き上げました 。その結果、現在は三越、イトーヨーカドー、いなげや等、埼玉県内40店舗以上の有力小売店と契約し、バイヤーから「量が足りない」と言われるほどの信頼を得ています 。
  • **品質による勝負:障害福祉サービスという側面も伝えつつ、それ以上に「品質」で勝負している点が、高い売上(年間1億3千万円)の源泉となっています 。
  • **高額な設備投資:ハウス一棟に約2,500万円程度、事務所等を含めると4,000万円規模の初期投資を自社で行い、企業へテナントとして貸し出すという、極めて戦略的なビジネスモデルを展開しています 。

■ 企業導入を阻む「収益化」という皮肉な課題

今回、最も印象的だったのは、新サービス『atGPアスタネモデル』を企業へ提案する際、皮肉にも「売上が出ること」が足枷になるという実態です 。

  • 上場企業特有のハードル:事業として収益が発生すると、株主への説明責任や経営陣(社長)の承認プロセスが必要になり、事業カテゴリーの検討など、決裁の難易度が格段に上がります 。
  • 「コスト」の方が通りやすい現実: 逆に、利益を生まない「単なる雇用コスト」であれば人事部長の判断だけで進められるため、多くの企業が収益化モデルを前に足踏みしてしまいます 。
  • 先行ビジネスの悪評:「農園型の障害者雇用」というカテゴリーにおいて、過去に一部で生じた「代行ビジネス」への悪評が、本質的な収益モデルに対しても「同じようなものではないか」という誤解を招いている懸念も共有されました 。

■ A型事業所の「在り方」を巡る深い議論

視察の後半では、A型事業所の本質的な役割について、非常に専門的な意見交換が行われました。

  • 一般就労への移行:GPでは、利用者の希望を尊重し、転職して高く評価されている事例など、一般就労へのステップアップを強力に後押ししています 。
  • 定着と自己理解:一般企業では適応が難しい方も一定数存在します。その背景には、一ヶ月に一度体調を崩すといった不安定さや、自己理解の難しさがあります 。庄司さんは、こうした特性に寄り添える「福祉の側面」を維持しつつ、企業側の理解と支援体制を底上げしていく必要性を説いておられました 。
  • サステナブルな支援体制:膨らみ続ける社会保障費の問題も見据え、福祉事業所の中にノウハウを溜めるだけでなく、支援員を民間企業へ送り込み、企業の中で障害者を育てる「IPS(個別就労支援)」のようなアプローチへ移行していくべきだという議論は、非常に示唆に富むものでした 。

「アスタネ」が目指す、障害の有無にかかわらず「稼ぐ誇り」を持てる社会。その実現には、法制度(相談援助事業の活用等)の更なる浸透と、企業側の意識改革が不可欠です 。今回の視察で得た知見を糧に、私たちも「働く」の選択肢を広げるための活動を加速させてまいります。