NPO法人クロスジョブ設立15周年記念イベント「CHANCE&CHALLENGE」 3:大阪府堺市

前回のブログに続き、NPO法人クロスジョブ設立15周年記念イベント「CHANCE&CHALLENGE」について報告します。

NPO法人クロスジョブ設立15周年記念イベント「CHANCE&CHALLENGE」 1:大阪府堺市

本日は、大阪府堺市にある、国際障害者交流センター「ビッグ・アイ」で開催された、NPO法人クロスジョブ設立15周年記念イベント「CHANCE&CHALLENGE」に参加しました。…

NPO法人クロスジョブ設立15周年記念イベント「CHANCE&CHALLENGE」 2:大阪府堺市

前回のブログに続き、NPO法人クロスジョブ設立15周年記念イベント「CHANCE&CHALLENGE」について報告します。 今回は記念講演として、元福岡労働局長の小野寺徳子氏に…

上記2つの報告に引き続き、今回は3回目として、小野寺徳子氏の講演の後に、当事者発表として行われた數田英輝さんが、大手製鉄会社へ障害者雇用として勤続10年を迎えた体験話を拝聴しました。
中途障害と向き合い、今でも懸命に就労をされている數田英輝さん。
1日1日、一歩一歩進む生活と就労の中には家族の支えもありました。


中途障害を乗り越えて──障害者雇用10年勤続の歩み

 數田英輝さんは、51歳の障害者雇用者として、これまでの10年にわたる勤務経験と、その過程で直面した困難や学びを語った。
 生まれつきではなく、病気の後遺症により中途障害者となった安田さんは、集中力や体力が続かず、仕事中の疲労感から居眠りしてしまうこともあったという。また短期記憶の困難、注意分散、感情のコントロールの難しさなども抱え、日常業務において多くの壁に直面した。

 そんな中、職場では本人の障害特性に合わせて配慮がなされ、危険の伴う工場作業からは離れた業務を担当することになった。情報共有や品質管理などの仕事では、トラブルを防ぐために日々工夫が求められた。具体的には、スマホやメモ帳、アプリなどを駆使し、作業を見える化し、忘れやすさを補っていた。
 さらに、數田さんは業務マニュアルの作成にも尽力。自らの業務内容や理解を文書化し、上司や周囲に共有することで、自身の働きが正当に評価されるようになったと語る。これは自己理解と他者理解を促進し、組織全体の効率化にもつながったという。
 社内研修や勉強会への参加にも積極的に取り組んだ。時にはミスや誤解からトラブルに発展することもあったが、その都度、上司や同僚との対話を通して改善に努めた。「継続すること」「少しの無理をして成長すること」の大切さを、身をもって実感したという。

 また、私生活では、妻と息子が支えとなった。特に妻は、數田さんの就職が決まるまで1日12時間以上働き、家計を支えてくれた。息子は思春期の難しい時期ながらも、家族として安田さんを見守り、時に厳しい言葉も投げかけた。それでも家族は共に歩み、數田さんの回復と社会復帰を支えてくれた。
 最後に、數田さんは「誰にでもできる仕事を、誰にもできないくらい丁寧にやる」ことの価値を説いた。そして、自らの経験を通して、「長続きするには、特別な力ではなく、小さな努力を積み重ねることが何よりも大切だ」と語り、講演を締めくくった。