“おむつ”がランウェイを彩る未来へ——2025大阪・関西万博「おむつコレクション」と平林景さんの挑戦
【懇談記録】“おむつ”がランウェイを彩る未来へ——2025大阪・関西万博「おむつコレクション」と平林景さんの挑戦
2025年6月30日、兵庫県尼崎市にて、2025年大阪・関西万博で開催された注目のイベント 「O-MU-TSU WORLD EXPO 『おむつコレクション』」 を企画・主催された 平林景(ひらばやし・けい)さんと懇談の機会をいただきました。
同席したのは、山本博司参議院議員、株式会社シーアイ・パートナーズの家住教志社長、本田信親専務(当法人理事)、そして当団体の金子訓隆代表理事。
それぞれが発達障害や障がいのある家族と向き合い、日々支援に取り組んでいるメンバーであり、平林さんの活動に対する共感と共に懇談をしました。

◆「おむつコレクション」に込めた願い
6月24日に大阪・関西万博のEXPOホールで行われた「おむつコレクション」は、その名の通り“おむつ”をテーマにしたファッションショー。
けれど、そこに込められていたのは単なる衣類の提案ではなく、“排泄”という人間の根源的な営みを、恥やタブーから解き放ち、誰もが安心して、おしゃれを楽しめる社会”への力強いメッセージでした。
企画したのは、医療・福祉の専門家が集う一般社団法人日本福祉医療ファッション協会。代表理事を務める平林景さんは、福祉の世界にファッションというクリエイティブな視点を持ち込み、これまでにも2022年にパリで開催された車いすモデルのみのファッションショーを成功させるなど、世界に向けてメッセージを発信してきた人物です。
当日のステージでは、車いすユーザーや義足モデルなど計31名が、プロジェクションマッピングの光と音に包まれながらランウェイを歩き、会場を埋め尽くす1900人の観客から大きな拍手を浴びました。ゲストには、タレントのテリー伊藤さんや宇宙飛行士・金井宣茂さんも登壇し、「おむつ」にまつわる可能性や社会課題を語るトークセッションも実施され、各種メディアでも大きく取り上げられました。
以下はその時のニュース動画です。
◆「マインドのクリエイティブ」こそが未来を変える鍵
懇談の中で、平林さんは印象的な言葉をいくつも紡いでくださいました。
・「福祉の現場は、実はとてもクリエイティブの力が求められる場所です。課題が多く、ネガティブに見られがちな領域だからこそ、固定観念をひっくり返すような発想が必要なんです」
・「“おむつ”という単語ひとつとっても、それをどう呼ぶか、どう見せるかで、社会の受け取り方は大きく変わります。色・形・素材・言葉選び、全てに創造性が問われます」
・「そして何より大切なのは、“マインドのクリエイティブ”だと思っています。ネガティブな状況を、どうポジティブに変換できるか。その視点こそが、本当の意味での創造性です」
この言葉に、一同深く頷きました。支援の現場にいると、日々の課題や制度の壁に悩むことが多く、つい心が沈むこともあります。けれど、平林さんの言葉は、その困難を「発想」で乗り越える可能性があることを教えてくれる強い光のようでした。
◆平林景さんの歩みと挑戦
平林さんのキャリアは、美容師から始まり、2004年には学校法人三幸学園にて教職に就任。2016年に起業し、尼崎で放課後等デイサービス事業を展開。2019年には「日本障がい者ファッション協会」、2024年には「日本福祉医療ファッション協会」を立ち上げ、障がいのある方々の“表現”と“おしゃれ”の機会を広げてこられました。
特筆すべきは、2022年のパリコレ車いすモデルショーの実現、そして2023年には国際福祉機器展(H.C.R.2023)でのショーの開催など、日本発の“福祉×ファッション”の革新を世界へと届けていることです。
◆共に感じた「気づき・共感・感動」
懇談の終わりには、全員がそれぞれの経験や思いを語り合い、「おしゃれ」や「おむつ」を通じて福祉に新たな風を起こそうとする平林さんの活動に、強い共感と感動を覚えました。
単なる衣類ではない。それは“心を包むアイテム”であり、“生き方を肯定する表現”なのだと、あらためて実感する時間でした。
平林さん、そして同じく福祉の最前線で挑戦する皆さまとの語らいは、これからの私たちの活動にとっても、大きなヒントと勇気を与えてくれました。ありがとうございました。
◆編集後記
「おむつ」という言葉から、ファッションショーや万博のステージを想像できる人は、まだ多くはないかもしれません。けれど、そこにこそ未来があります。“見えない障壁”を、誰かの創造力がひとつずつ溶かしていく。それが今回、私たちが目の当たりにした光景でした。
これからも、「福祉×創造」の交差点から、新しい社会の形が生まれていくことを信じて