「インクルーシブ教育・社会共生の実現」愛媛大学 附属インクルーシブ教育センター長 苅田教授らと懇談:愛媛県松山市

9月20日午後、山本博司参議院議員の視察に同席させて頂きました。
視察・懇談した方は、愛媛大学 教育学部 附属インクルーシブ教育センター長 苅田知則教授、今野潤講師です。

苅田教授とのご縁は、昨年12月に行われた、ニーズ・シーズマッチング強化事業山本博司参議院議員からご紹介頂いたご縁があります。

ニーズ・シーズマッチング強化事業

障害者自立支援機器 ニーズ・シーズマッチング強化事業ニーズ・シーズマッチング交流会 東京会場に出展しています。12月12日~14日まで場所は、東京都立産業貿易センタ…

また今回、公益財団法人テクノエイド協会が行っている、「知的障害者の支援機器に係るニーズ情報の収集・提供の在り方に関する調査研究」として、苅田教授はこの研究の座長を務めており、当団体の金子代表理事も委員を務めております。

知的障害者の支援機器に係るニーズ情報の収集・提供の在り方に関する調査研究

8月19日14時から、知的障害者の支援機器に係るニーズ情報の収集・提供の在り方に関する調査研究 第1回検討会がオンラインで開催されました。 知的障害者の支援機器に係…

苅田教授の「共に学び、生きる共生社会コンファレンス」「〇(まる)の集い」、そして「愛媛県障がい者ICTサポートセンター」の取り組みは、インクルーシブ教育の理念を具現化する先進的な実践例として注目されています。

2023年の「障害者自立支援機器ニーズ・シーズマッチング交流会」で紹介された重度心身障害児支援機器「以心伝心」は、障害の有無にかかわらず、全ての人々のコミュニケーション権を保障する取り組みとして高く評価されています。

苅田教授のアプローチは、2014年に批准された障害者権利条約の理念に沿っており、特に第24条で強調されているインクルーシブ教育システムの構築に大きく貢献しています。さらに、2016年に施行された障害者差別解消法の精神を体現し、合理的配慮の提供を通じて、教育における平等な機会の確保を目指しています。

2019年度からの文部科学省委託事業「学校卒業後における障害者の学びの支援に関する実践研究事業」への参画は、2018年に閣議決定された第4次障害者基本計画に基づく取り組みの一環です。この計画では、生涯学習の推進が重要施策として位置づけられており、苅田教授の活動はこの国家戦略を具体化する先駆的な実践といえます。

「以心伝心」の開発背景には、苅田教授自身の個人的な経験が反映されています。重度心身障害のあるお子様を7歳で亡くされた経験から、約4.3万人と推定される重度心身障害児者のコミュニケーション支援の必要性を強く認識されました。この機器は、身体の微細な動きを捉える「ブライトサイングローブ」技術と、状況に応じたメッセージを提示する「GPS-VOCA」技術を統合し、より効果的なコミュニケーション支援を実現しています。

さらに、「以心伝心」の継続的な改良と臨床での検証は、2013年に施行された障害者総合支援法の基本理念である「地域社会における共生」の実現に向けた具体的な取り組みとして評価できます。この法律は、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援することを目的としており、苅田教授の取り組みはこの目的に合致しています。

これらの活動は、2018年に改正された障害者雇用促進法の精神にも沿っています。同法は障害者の職業的自立を促進することを目的としていますが、苅田教授の生涯学習支援の取り組みは、障害者の社会参加と自立を促進する上で重要な役割を果たしています。

インクルーシブ教育の実現に向けた苅田教授の多面的なアプローチは、教育、福祉、労働など多岐にわたる分野での政策立案や実践に大きな示唆を与えています。今後の障害者施策の展開において、このような先進的な取り組みを参考にしつつ、より包括的かつ効果的な支援体制の構築が期待されます。


苅田知則(かりた とものり)氏

学歴:
九州大学教育学部卒業(1995年)
九州大学人間・環境学研究科修了(2000年)

職歴:
香川医科大学医学部人間社会環境医学講座(2003-2004年)
東京大学先端科学技術研究センター(2004-2005年)
愛媛大学教育学部講師(2005年)
愛媛大学教育学部准教授(2008年)
愛媛大学教育学部教授(2020年)
愛媛大学教育学部附属インクルーシブ教育センターセンター長(2021年)
研究分野と活動
苅田氏の研究分野は、特別支援教育や障害児者のアクセシビリティ、環境心理学など多岐にわたります。特に、重度・重複障害者の生涯学習支援に力を入れており、文部科学大臣表彰を受けたこともあります1。

主な業績
論文:
「重度重複障害者等の生涯にわたる学びの場づくり」(2022年)
「特別支援学校教諭免許法認定通信教育の取り組み」(2022年)
受賞:
文部科学大臣表彰(2020年)