「障害者雇用の促進に向けた支援」JEED東京障害者職業センター 多摩支所を視察:東京都立川市
10日午後、立川市内の独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)東京障害者職業センター 多摩支所を、山本博司前参議院議員、公明党立川市議らとともに視察させていただき、意見交換を行いました。
JEED東京障害者職業センター 多摩支所長らから、JEEDの概要や多摩支所の体制および利用状況・支援状況等について詳細な説明をいただき、活発な意見交換を行いました。

(参加者)
・山本博司氏(前参議院議員)
・金子訓隆(NPO法人輝HIKARI代表理事)
・飯田哲郎氏(東洋システム(株)社長・たちかわIT交流会会長)
・公明党立川市議4名《山本美智代(幹事長)氏、高口靖彦氏、瀬順弘氏、大沢純一氏》
JEEDは、年齢や障害の有無にかかわらず、誰もが能力を発揮し、意欲を持って安心して働ける社会の実現を目指しています。このため、高齢者、障害者、求職者、事業者等に対して総合的な支援を実施しております。本視察では、特に障害者雇用支援に焦点を当てて伺いました。
障害者に対しては、ハローワーク、障害者就業・生活支援センター、病院、特別支援学校等の関係機関と連携し、就職相談、職業能力評価、就職前支援から就職後の職場適応援助まで、個々の状況に応じた継続的なサービスを提供しています。(以下、多摩支所の活動状況)
・多摩支所は25名の人員体制。令和6年度の実利用者は833人。
・精神障害・発達障害・高次脳機能障害者が全体の74.4%を占め、職業リハビリテーション計画策定数は405人。
・職業準備支援の実施状況(令和6年度)は76人。精神・発達・高次脳機能障害者の就職率は75.4%。
・ジョブコーチ支援の実施状況(令和6年度)は38人。精神・発達・高次脳機能障害者の職場定着率は89.3%。
・職場復帰(リワーク)支援の実施状況(令和6年度)は開始者数92人、復職率91.8%。
・事業主への支援(令和6年度)は実事業所数374所、体系的実事業所数23所。
JEEDの活動、特に多摩地域を中心とした取り組みや障害者雇用納付金関係助成金等について、これまで十分に知見が及んでいなかった点を深く学び、大変参考となりました。約1時間30分の視察では、丁寧な説明に加え、多くの疑問・質問に対しても懇切に応じていただきました。
また懇談の中では、岡山県総社市の障がい者1500人雇用委員会の委員として、一般企業への障害のある方への雇用について説明いたしました。
「障害者雇用」となると、一気にハードルが挙がるような気持ちになってしまい、企業に対して雇用が推し進まない現状があります。総社市はそれを一歩ずつ、行政が当事者や企業と向き合いながら雇用を推し進めていきました。
今では市民の間でも「障害者雇用」という言葉が総社の中でも認知されています。
そう考えると、JEEDの支援は企業・行政への認知がなお不足している状況にあり、今月20日には立川経営者向け講演の機会をいただいております。中小企業における障害者雇用の推進に向け、公明党の区議・都議の方々と連携しつつ、輝HIKARIとしても積極的に活動してまいります。ありがとうございました。

以下は、東京障害者職業センター 多摩支所長から説明を受けた内容の要約となります。
これは、2025年11月10日に行われた、独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)の東京障害者職業センター支所長(話者2)による業務説明および、意見交換の要約です。
1. 導入と視察の目的
山本博司前参議院議員は、視察の目的について、法定雇用率が来年2.7%に上がり、今後も法改正で障害者雇用が進む中で、JEED(会話録中では「重度」または「児童」)が地域でどのような役割を担っているか、特に多摩地域での実績を把握するためであると説明しました。また、近日中に中小企業の経営者へ話をする機会があり、その際に視察の内容も共有したいと述べました。
2. JEED(高齢・障害・求職者雇用支援機構)の全体概要
支所長は、JEEDの正式名称が「高齢・障害・求職者雇用支援機構」であり、その名の通り、年齢や障害の有無に関わらず、働くことを通じて社会参加できるよう支援することが組織の使命であると説明しました。
業務の大きな柱は「高齢者支援」「障害者雇用支援」「職業能力開発」の3つですが、この日の説明は「障害者の雇用支援」に特化して行われました。
3. JEEDの障害者雇用支援(全国的な取り組み)
支所長は、JEEDが全国規模で行っている障害者雇用支援の業務概要を説明しました。
- 職業リハビリテーションサービス: 視察先の支所を含め、全国47都道府県に設置されている「障害者職業センター」が担う中核業務です。
- 広域障害者職業センター・障害者職業能力開発校: 国が設置しJEEDが運営する施設で、全国に2ヶ所(埼玉・所沢、岡山・吉備高原)のみ存在します。特に重度の障害がある方に対し、より高度な技術訓練と職場適応支援を一体的に提供します。
- 研究・開発部門(本部・幕張): 支援の現場だけでなく、本部(幕張)に研究部門を持つことがJEEDの強みであると強調されました。全国的な調査研究や国の政策立案への寄与のほか、例えば発達障害者の対人スキル向上プログラムなど、現場で有効な支援技法を開発し、それを全国のセンターを通じて普及させる役割を担っています。
- 専門職員の養成・研修: 地域の企業内で雇用管理を担当する人材や、急増している地域の福祉支援機関(就労移行支援事業所など)のスタッフに対し、スキルアップのための研修やネットワーク構築支援も行っています。
- 納付金制度: 法定雇用率を達成していない企業から納付金を徴収し、それを原資として、障害者を雇用している企業への調整金や各種助成金(施設整備、雇用管理の配慮など)を支給する制度を運用していると説明しました。
- 事業主支援(情報・ツール提供):
- リファレンスサービス(事例検索): ホームページ上で、業種や障害種別、企業規模などを入力すると、他社の具体的な障害者雇用事例(会社名も含む)を検索できるサービスを紹介しました。
- 就労支援機器の貸出: 拡大読書器やノイズキャンセリングヘッドフォンなど、障害を補う高額な機器を、購入前に企業や個人が試用できる(無償貸出)制度があると説明しました。
- マニュアル・動画の公開: 障害種別ごと、あるいは雇用が進みにくい業種ごとのマニュアルや社内研修用の動画などを、ホームページで全て無料公開・ダウンロード可能にしていると述べました。
この説明に対し、山本博司氏は、以前厚生労働省にヒアリングした際「IT分野での障害者雇用の事例が少ない」と聞いたが、このリファレンスサービスを使えば検索できるのかと質問しました。支所長は、決して事例がないわけではなく、このサービスで検索可能であると回答しました。
また、啓発活動として、障害者の技能競技大会である「アビリンピック」を全国大会や国際大会(フランス)も含めて開催していることを紹介しました。
4. 東京障害者職業センター(支所)の具体的な業務
次に、支所長は、視察先である東京障害者職業センター多摩支所の具体的な業務内容について説明しました。
- 体制: 支所は所長以下、障害者職業カウンセラー、リワーク支援担当、ジョブコーチ、支援アシスタントなど約25名の体制であると説明しました。
- サービス概要: 支援対象は「障害のある方」「事業主」「関係機関」の三者。支援のタイミングは「就職」「雇用継続」「職場復帰」の3つの軸で構成されていると述べました。
- 利用者状況: 年間の実利用者は約900名弱で、そのうち約74%が精神障害、発達障害、高次脳機能障害の方であると説明しました。これは、より支援の困難性が高い方を重点的に支援するというセンターの使命を反映しているとのことです。
- 手帳の有無: 「手帳がなくても支援を受けられるか」という質問に対し、支所長は、診断があれば手帳がなくてもセンターの支援(相談、プログラム利用)は全て無料で受けられると回答しました。ただし、障害を会社に伝えたくない(非開示)場合は企業へのアプローチ(ジョブコーチ派遣など)はできず、また法定雇用率のカウント対象にはならないと補足しました。
4-1. 障害のある方への支援
- 職業評価・職業指導: 相談、検査、作業体験などを通じて本人の得意・不得意や課題を分析し、支援プラン(職業リハビリテーション計画)を作成します。このプラン作成を年間約400名に実施しており、多くはハローワークや地域の就労支援機関からの紹介で、主に多摩地域の方々が利用しているとのことです。
- 職業準備支援: 就職や職場適応に必要なスキル(ビジネスマナー、コミュニケーション、ストレス対処など)を学ぶためのプログラムを提供。模擬的な作業体験と講座、個別相談を連動させ、最長12週間(福祉サービスの移行支援は2年)という短期間で、就職直前のウォーミングアップや最終調整を行います。
4-2. 障害のある方と事業主双方への支援
- ジョブコーチ支援: センターのスタッフ(ジョブコーチ)が職場に訪問(アウトリーチ)し、障害のある方本人と、企業(上司・同僚)の双方に専門的な支援を行います。本人への助言だけでなく、企業側に対し、障害特性を踏まえた指示の出し方や職務設計(仕事の切り出し)などを具体的に助言します。約3ヶ月など期間を決めて集中的に支援し、最終的にはジョブコーチがいなくても職場で問題解決できる体制づくりを目指します。
- リワーク支援(職場復帰支援):メンタル疾患(うつ病など)で休職している方が、元の職場に復帰することを目指す専用プログラムです(離職者は対象外)。
- 三者合意: 本人、事業主(人事・上司)、本人の主治医の三者とセンターが連携し、復帰に向けたプランを立てることが前提となります。
- プログラム: センターに通所し、生活リズムの再構築、集中力・持続力の回復、ストレス対処法やコミュニケーションの学習を行います。
- 企業連携: 復帰後の受け入れ体制(業務内容、時短勤務、上司の関わり方など)について、産業医や保健師とも連携しながら企業側と具体的な協議を行います。
- 飯田社長からは「IT企業はメンタル不調者が多い」との発言があり、支所長もIT業界からの利用者は多いと認めました。なお、財源の関係で公務員は対象外とのことです。
4-3. 事業主・関係機関への支援
- 事業主支援: 新規雇用、雇用継続、キャリアアップ、職場復帰(メンタル疾患以外に、事故による高次脳機能障害なども含む)など、企業の様々な段階での相談に応じます。年間約380の事業所を支援しており、全国に拠点があるため、他県の支店への支援も地域のセンターと連携して対応可能であると述べました。
- 関係機関支援: 地域の就労移行支援事業所など、福祉機関の職員に対する研修や、OJT(実際の支援現場に同行してもらう共同支援)にも力を入れています。これは国の中期計画でも重要視されており、件数が増えている分野であると説明しました。
5. 地域の連携と障害者雇用の現状
支所長は、多摩地域のハローワーク圏域ごとに整理された「支援機関マップ」を配布し、ハローワーク、各市の就労支援センター(例: 立川市の「働こう」)、就業・生活支援センター(例: 「オープナー」)など、連携している地域の機関を紹介しました。
また、日本全体の障害者(約1165万人)のうち、就労可能年齢(18~64歳)の在宅者は約487万人、そのうち企業で雇用されている人は約64万人、福祉的就労(B型事業所など)が約48万人であり、約300万人以上が働きたい意志があっても働けていないという国の資料が共有されました。
6. 課題と今後の展望(企業啓発の重要性)
最後に、訪問者側とJEED側で活発な意見交換が行われました。
国や都への要望を問われた支所長は、福祉・就労支援分野全体として「支援人材の確保と育成」が大きな課題であると述べました。
ここで金子訓隆代表理事は、自身が委員を務める岡山県総社市の事例を紹介しました。総社市(人口約7万)では、法定雇用率の対象企業が51社しかない状況からスタートし、市長の強力なトップダウンのもと、小さな企業(5~7名規模)での雇用を推進した結果、1400人以上の雇用(うち7割が一般企業)を実現したと述べました。
話者4は、総社市の経験から「経営者は支援制度を知らないだけ」であると指摘。多くの企業が「うちでは無理」と拒否感を示すが、助成金制度、無料の相談体制、ジョブコーチによるトラブル時のフォロー体制(アウトリーチ)があることを知れば、挑戦する企業は増えると主張しました。
そして、飯田氏が会長を務める立川の「IT交流会」のような経営者が集まる場で、JEEDがこうした支援制度の説明会を実施できないかと提案しました。支所長は「ぜひ可能です」と応じました。
JEEDが立川のビル5階にあること自体、地元の企業に全く知られていないと指摘。「IT交流会で継続的にテーマにしたい」、山本氏は「20日の中小企業向けの講演でまず自分が紹介する。商工会議所やロータリークラブなど、経営者の団体へのアプローチも必要だ」と、今後の具体的な連携について意欲を見せました。
支所長も、組織の知名度・発信力が課題であると認め、「JEED(ジード)」という略称(令和5年頃から使用開始)と共に、支援内容を広く知ってもらう機会として期待を寄せました。

