かもめ第三工房を埼玉県議・さいたま市議らと見学:品川区五反田
8日午後からは、東京都品川区五反田にある、社会福祉法人福栄会が運営する、精神障害者を対象とした、就労継続B型事業所「かもめ第三工房」を見学。施設長からお話を伺いました。
この見学には、埼玉県議会議員の小早川一博県議会議員、齋藤健一さいたま市議会議員と共に参りました。就労継続B型事業所の、かもめ第三工房の支援の取り組みや業務内容、活動内容も含めて色々と伺いました。
【かもめ工房 音声解説はこちら】

就労継続支援B型事業所「かもめ第三工房」見学・懇談要約
埼玉県議会議員・小早川一博氏、さいたま市議会議員・齋藤健一氏らと共に、東京都品川区五反田にある社会福祉法人福栄会が運営する「かもめ第三工房」を視察。施設長から事業所の概要、支援方針、マネジメント事業による変化など、多角的な運営状況について説明を受けた。
【1】法人・施設の概要と支援体制
社会福祉法人福栄会は、精神障害者を中心に高齢者・知的障害・児童支援までを幅広く展開する社会福祉法人。かもめ第一・第二・第三工房の3つのB型事業所を有し、全体で60名の精神障害者が通所。第三工房は五反田駅近くに立地し、公園清掃・館内清掃・クリーニング・軽作業・焼き菓子製造・物品販売など多岐にわたる就労訓練を提供しています。
支援は個別性を重視し、利用者の体調や希望に応じて通所日数・時間を柔軟に設定(週1~5日、1日数時間から6時間程度まで対応)。利用者の大半は地域の自宅から通っており、生活保護受給者や一人暮らし、高齢親との同居世帯など様々です。
【2】主な業務内容と収益構造
主な受注業務は、以下の通り:
- 公園清掃(区からの委託):品川区が「福祉事業所に優先発注」という方針を持っており、数十年にわたり継続受託。
- 館内清掃(区立施設中心):福栄会が管理を受託する建物での作業が中心。
- クリーニング業務:主に区立保育園のシーツやカバー類を対象に、ルーチンで受託。
- 軽作業:印刷会社等からの下請けで、シール貼り・梱包・折込作業など。近年、新規取引先の開拓に取り組み中。
- 焼き菓子・自主製品販売:クッキー等を製造・販売。月20件以上、地域イベントや大学・商店街等で出店。売上の一部は「特別工賃(ボーナス)」として利用者に還元。
平均工賃は年々増加傾向にあり、2024年度実績では月額2万6,700円~3万1,600円程度。物販や軽作業の売上増とともに、年に2~3回の「特別工賃(ボーナス支給)」を実施するなど、利用者のモチベーション向上も図っています。
【3】東京都マネジメント事業の活用と効果
2024年度は東京都の「B型事業所マネジメント支援事業」に参加。ディーセントワーク・ラボ等から2名のアドバイザー(経営経験・営業経験のある専門家)を派遣。月1~2回のアドバイスを受けながら、以下の課題に取り組みました。
- 課題(1):軽作業の単価が適正か不明
- 単価が適正かを把握するため、市場価格を調査。
- 単価表を整備し、相手事業者との価格交渉に備える。
- 課題(2):新規受注先の開拓
- 営業電話を通じて新規企業にアプローチ。
- 単価表や事業所案内チラシを作成し、信頼感を持たせる工夫。
- 成果(1):適正単価での受注成功
- 福祉事業所という立場を理解し、共感する企業とのつながりを獲得。
- 数件の新規受注を獲得し、低単価の取引を徐々に見直し中。
- 成果(2):就労意欲と工賃の向上
- 利用者の関心・適性に合った作業選択制を導入(例:公園清掃を希望者が優先的に実施)。
- 楽しみながら働ける環境整備と、特別工賃による還元の工夫。

【4】議員・見学者との質疑応答で見えたこと
- 精神障害者のみの支援でも、安定的な事業運営が可能であること
- 特に「利用者間トラブルがほとんどない」とのことでした。
- 就労時間・通所頻度を柔軟に設定することが安定通所の秘訣でした。
- グループホームとの連携は限定的
- 福栄会自身は精神障害者向けグループホームは未設置。
- 利用者の多くは一般住宅・生活保護などを活用しながら地域で暮らしている。
- 通所と生活リズムの安定を重視するB型の特性を踏まえた運営。
- 就労移行やA型事業所とは異なるステージとして位置づけ。
【5】今後の展望と示唆
見学を通じて、精神障害者に対するB型支援における「経済的自立支援」と「個別性の尊重」の両立の重要性が確認された。また、民間企業出身のアドバイザーによる支援が、生産性の向上や営業力強化に有効であることが明らかでした。
一緒に同行した、齊藤健一市議や小早川一博現議会議員からは、埼玉県やさいたま市でも同様の仕組み(専門家派遣・事業所支援)の導入検討を行ってまいりたいとのこと。また、現在専門家派遣・事業所支援などがあればそれを拡充していきたいとの意見も出ました。
