工賃日本一の徳島県の原動力・障害者支援施設眉山園を山本博司氏と共に視察:徳島市
7日午前 徳島市内の社会福祉法人徳島県身体障害者連合会 障害者支援施設 眉山園へ。

山本博司氏(前参議院議員)、シーアイ・パートナーズ家住社長らと共に視察。また地元の黒下広宜徳島市議がご同席されました。

三橋一巳園長(全国社会就労センター協議会(SELP、セルプ協)副会長)やNPO法人とくしま障がい者就労支援協議会(三並理事長)らと障害者就労などで懇談・意見交換しました。
社会福祉法人徳島県身体障害者連合会は、障害者支援施設「眉山園」(生活介護事業/施設入所支援事業)・社会就労センター「かもな」(就労継続支援B型事業:定員40名)の他、「眉山園デイセンター」(生活介護事業)や障害者生活支援センター「眉山園」(相談支援事業)等の福祉サービスも運営しています。
「かもな」ではクッキーなど製造・販売されており、工賃も月額平均工賃は9万5445円で徳島一の工賃です。47都道府県中、徳島県が日本一の平均工賃額を続けており、その原動力が三橋園長です。

またNPO法人とくしま障がい者就労支援協議会は、徳島県内にある67の障がい者就労支援施設・就労事業所からなる非営利団体。県内の就労移行支援事業所・就労継続支援A 型・B 型事業所・地域活動支援センターなどでつくる団体です。障がいのある方がいきいきと働ける社会を目指した活動をされています。
共同発注の仕組みや農福連携等工夫しながら進めており、令和5年の徳島県の工賃は日本一で月2万9312円です。
企業と障がい者施設をつなぐお仕事マッチングオンラインサービス「あわのわーく」を開始されています。県の優先調達は他県と比較し、配慮いただき発注されています。今後民間からの発注促進の為、商工会議所など経済界へのアプローチを強めたいとの事です。
障害者就労の中で現在進められている、日本財団の国立国会図書館DXプロジェクトについても意見交換をしました。
日本財団は、国立国会図書館の蔵書をデジタル化する事業を受注して、2024年度は障害者施設8か所(福岡県・熊本県等)に委託、2025年度は13か所の施設が参加の予定です。約7億円を超える規模の障害者優先調達となっています。
熱い情熱と知恵と工夫のお話しを聞かせて頂き、目標達成に向けた可視化の取り組み等伺いました。
また障害者の皆様が創られた美味しいお弁当もいただきました。ありがとうございました。

【訪問者】
・家住 教志(㈱シーアイ・パートナーズ 代表取締役)
・山本 博司(同社 顧問:元参議院議員)
・本田 信親(同社 専務取締役)
・金子 訓隆( NPO法人HIKARI 代表理事)
・谷部 有彦(同社 執行役員 品質管理部長)
・下鳥 洋樹(㈱Reno/㈱Reno Wellness 代表取締役)
・江本 尚子(㈱フューチャージニアス 執行役員)
・黒下広宜(公明党徳島市議)
【訪問先】
(社会福祉法人徳島県身体障害者連合会 障害者支援施設 眉山園)
・三橋一巳園長、篠塚亮太サービス管理責任者、野々村吉史主任支援員、渡邊敏明主任支援員(社会就労センターかもな)
(NPO法人とくしま障がい者就労支援協議会)
・三並智理事長(障害者支援施設 健祥苑施設長)、濱田昌副理理事長(自立支援センターあぷろーち所長)、
・松下義雄副理事長(社会福祉法人カリヨン副理事長)、大谷佳余さん、尾藤悠紀就労サポート技術指導員
・森口浩徳理事長、高橋和孝次長(ワーク&ディラクシエ)
・平石英明施設長(就労支援センターハーモニー)
・高倉保豆美管理者(ふぁみりーあっぷ)
以下の内容は約50分程度の懇談内容を要約しました。
多少相違があるかと思いますが、参考までに掲載いたします。
本懇談会の参加者には障害者就労支援施設の関係者、行政担当者、NPO法人代表、議員などが含まれる。主なテーマは、徳島県における障害者就労支援の先進事例、優先調達制度の活用、賃金向上の取り組み、DX(デジタルトランスフォーメーション)の導入可能性、および全国的な展開と協力体制の構築である。議論は、施設見学の感想から始まり、制度の歴史的背景、具体的な成功要因、課題解決策、他県との比較、将来展望へと展開した。以下に、主要な内容を時系列的・テーマ別に整理して要約する。
1. 施設見学の感想と全体評価
家住氏は、徳島県の障害者就労支援施設を見学した感想を述べた。同施設は、優先調達制度の活用、法人格の強み、蓄積されたオペレーション、企業魂のような精神が融合した「掛け算」の効果により、独自の強さを発揮していると評価した。これにより、他施設では追随できないレベルに達しており、仕組み化された運営に感動し、「心が震え、鳥肌が立った」と表現した。これは、久しぶりの深い感動体験であり、感謝の意が示された。
賃金面では、現在平均9万円に達していることが話題となった。山本氏は、自身の交流時は6万円程度だったと回顧し、向上の背景を尋ねた。これに対し三橋氏は、スタート時は3万円程度だったが、優先調達の拡大、特に県からの発注(約3000万円規模)が寄与したと説明。全国トップレベルの受注額を維持するため、納期厳守を徹底し、責任を持って対応しているとした。
2. 優先調達制度の仕組みと徳島県の先進性
優先調達の詳細が議論された。徳島県には、優先調達推進本部があり、副知事が本部長を務め、各部局に目標を設定して指示を出している。これにより、予算を活用した発注が促進される。2022年度の急増は、コロナ禍での経済支援策が背景で、国の方針により生活必需品や物資の支援を優先調達で実施した結果、金額が大幅に伸びた。
徳島県の就労支援協議会は、全国的に見て先進的で、施設数は65程度と少ないながら、質の高い連携を実現している。過去、全国で施設数が少なく2桁だった時代から、右肩上がりに改善した。2012年頃の法改正で、共同発注の仕組みが整備され、環境が整った。これにより、他県も追従する流れが生まれているが、徳島はスタートが早く、確実な成果を上げている。例えば、山形県や京都は最近組織化されたばかりで、遅れが見られる。
NPO法人化のきっかけとして、行政からの仕事受注をスムーズにするため、19年前に法人化した経緯が語られた。知事の熱心な支援も寄与し、トップダウンの目標達成意識が根付いている。施設内での「数字の概念」導入時には、福祉関係者から拒否反応があったが、企業努力の必要性を強調し、克服した。
3. 障害者就労支援の課題と工夫
企業内就労支援の新モデルも提案された。企業内に施設を設置すれば、仕事確保が容易になり、障害者雇用の枠組みが自然に消滅する可能性がある。これにより、賃金向上と社会統合が進む。一方、グループ会社でのDX取り組みは、本部集約によるスペシャリスト活用が主で、まだ強化途上である。
4. DX導入と全国プロジェクトの展望
DXの遅れが福祉分野の課題として指摘された。埼玉県の事例では、B型拡大ステーション事業(予算約2100万円)で賃金向上を目指すが、二重行政の弊害があり、効果が限定的。都市部ゆえの甘えも自覚され、IT活用の必要性が強調された。例えば、議事録のAI要約やスキャニング作業を障害者優先調達で受注可能で、職員の視点転換が鍵となる。
国立国会図書館のスキャニングプロジェクト(総額40億円規模、7億円が障害者施設向け)が焦点となった。これは、膨大な蔵書のデジタル化で、数十年続くボリュームがある。マニュアル化とネットワーク構築が重要で、各県の統一基準を提案。研修の不足を補うため、国予算の追加(機器だけでなく人員研修)を提言。山形県や福岡県の先行事例を参考に、徳島県も検討中。
協力体制の構築が呼びかけられた。スキル共有やメンタルコントロールの支援を提案。マニュアルのシェア、ITメンバーの派遣を具体的に挙げ、一社単独ではなく、全国ネットワークを活用すべきとした。将来的なデジタル化へ拡大可能で、継続的な仕事確保が見込まれる。
5. 他県比較と今後の連携
埼玉県のマルシェ事例が紹介され、徳島県の出展を歓迎。徳島市の優先調達額(約400万円)は低く、改善要望が出た。全国選挙区の取り組みも触れられ、議員の後押しが重要。
全体として、徳島県の優先調達モデルは全国模範で、DX導入により賃金12万円達成も可能。視察後のスケジュールは、県内検討を進め、機器支援(日本財団)活用を予定。参加者間での連携強化が合意され、好事例の共有が期待される。
この懇談は、障害者就労の質向上に向けた実践的議論を展開し、制度活用とイノベーションの重要性を再確認した。総括的に、トップのコミットメント、早期介入、DXネットワークが鍵であり、全国展開の基盤を築くものとなった。