日本初の相談支援事業所単独の社会福祉法人化」社会福祉法人ソラティオ岡部理事長と懇談

1日午前、荒川区の相談支援事業所を経営している社会福祉法人ソラティオを訪問。山本博司氏(前参議院議員)と元厚労省 障害者雇用対策課長・福岡労働局長を歴任した小野寺徳子さんと共に訪問致しました。

岡部正文理事長・林田五月主任(医療的ケア児等支援コーディネーター)と「相談支援事業の現状・課題・今後について」伺い、意見交換させて頂きました。
2014年に一般社団法人を荒川区に相談支援事業を設立。相談支援事業が共生社会に実現に最も寄与できる事業であると考え2022年11月に日本で初めて単独の相談支援事業として社会福祉法人化。
人口22万人の荒川区の基幹相談支援事業を中心に展開。スタッフは現在20名です。 
専門性のある相談員と共にピアサポートの出来るメンバーを育成。関連機関や行政と連携をしながらきめ細やかな支援が取り組まれています。相談事業単独で毎年収益もあげ、さらなる事業拡大を進めておられます。


また本人・家族等の支援に向けた体制整備は
1.基幹相談支援センター
2.地域生活支援拠点等
3.協議会が軸に連携
し、市町村のバックアップで整備を進めており、荒川区が先駆的なモデルとして取り組まれています。岡部理事長の相談支援の実践とデータに基づく分析からの説明は説得力があり、10年間の素晴らしい取組に大変感銘を受けました。


以下に、岡部理事長・林田主任・山本博司氏・小野寺徳子氏と金子訓隆代表理事で懇談した内容を要約しました。

社会福祉法人ソラティオの取り組みに関する懇談内容要約

本懇談は、社会福祉法人ソラティオの岡部理事長から、同法人の障害者支援事業、特に相談支援事業の取り組みについて詳細な説明を受けたものである。同席者は、山本博司氏(前参議院議員・元厚生労働副大臣)、小野寺徳子氏(元厚生労働省障害者雇用対策課長、元福岡労働局長)、金子訓隆氏(NPO法人輝HIKARI代表理事)であった。懇談の主眼は、相談支援事業の現状課題、経営戦略、行政連携、将来展望に置かれ、参加者間で活発な議論が交わされた。以下に、その主要な内容を整理して要約する。

ソラティオの概要と事業特徴

ソラティオは、2014年に設立された、相談支援事業に特化している点が最大の特徴である。岡部理事長は、設立当初は1人でスタートしたが、すぐに5人の職員を合流させ、事業を展開。現在、職員数は約20人に達し、売上高は約1億5000万円規模に成長した。事業内容は、荒川区での基幹相談支援センター運営、委託相談支援事業所、自立生活センター、計画相談、地域移行支援、障害児相談支援など、国が提唱する相談支援の3層構造(基幹、委託、個別給付)を1法人でフルスペックでカバーしている。

岡部理事長は、相談支援事業のみに注力する理由として、他の事業を抱えると相談支援が疎かになる可能性を指摘。相談支援体制が全国的に不十分な中、この事業を中核に据え、充電期間として専念することで、質の高い支援を実現していると説明した。個別給付収入は昨年約8500万円で、今年は1億円超えを目指すが、人材確保と育成が課題となっている。

相談支援事業の現状と課題

懇談では、相談支援事業の全国的な課題が多角的に議論された。まず、報酬改定の影響が大きい。令和3年と令和6年の改定で報酬が引き上げられ、黒字化が可能になったが、それ以前は収益性が低く、多くの事業者が苦戦していた。金子氏は、ある担当官から聞いた話として、社会福祉法人の障害福祉事業での過剰利益を社会還元する意図で相談支援の報酬を低く設定した経緯を共有。山本氏は、福祉と雇用の連携をテーマに議論してきたが、相談支援が縦割り行政の影響で十分に俎上に載らなかった点を指摘した。

セルフプラン率の高さが問題視された。全国データでは、地域差が大きく、荒川区では低いが、目黒区では子供のセルフ率が67%と高く、支援体制の不備が露呈している。岡部理事長は、荒川区で平成26年時点のプラン作成率がわずか30人(支給決定者1300人中)と低かった状況を改善し、3年で全件プラン作成を実現した経験を語った。これは、行政との連携と職員の集中投入によるもので、うち500件を3人で担当した過酷な働き方も振り返られた。

都市部と中山間地の格差も論点となった。政令指定都市や特別区では人口集中と効率的なマネジメントで黒字化しやすいが、中山間地では距離の問題でペイしない。岡部理事長は、介護保険同様、地域別の報酬体系を提唱。小野寺氏は、埼玉県朝霞市(人口15万)の事例を挙げ、セルフ率は低いが、1-2人規模の小規模事業所が多く、採算が取れていない実態を説明した。

経営戦略と効率化の取り組み

岡部理事長の経営力が高く評価された。病院勤務時代にベッドコントロールなどの経験を活かし、相談支援を資本主義的に運営。職員1人あたり平均70件を担当し、令和3年前の120件から効率化を図った。困難ケース(例: ゴミ屋敷化、アルコール中毒)はベテランが初期対応し、新人にパス。行政や他機関との連携で負担を分散している。

加算活用が鍵で、機能強化型(4人以上体制、ピアスタッフ、主任配置)で単価を向上。連携型加算(他事業所との事例検討)も導入し、月30件で売上540万円(1人体制)から960万円(強化型)へ倍増可能。地域定着支援では、緊急駆けつけ契約(月3000円/人、50人で年180万円超)で安定収入を確保。岡部理事長は、データ分析を重視し、全国自治体のセルフ率やモニタリング頻度をExcelで解析。岩手県奥州市(人口11万、セルフ率0%)の事例では、モニタリングが6ヶ月ごと中心で丁寧さが不足と分析した。

人材確保では、ピアスタッフ(障害当事者)を積極雇用。現在4人(来月5人)で、精神障害者らが相談支援補助や地域移行体験共有を担う。給与は年400万円超の者もおり、マイナス経験を活かした活躍を強調。中途採用や60歳以上のスポット活用も検討。AI活用の将来像として、相談内容入力で支援提案や職員教育に用いる方針を述べた。

行政連携とモデル展開

荒川区との連携が成功モデル。基幹相談センターとして、他事業所に新規案件を振り分け、全体コントロール。ワーキンググループで最低4件受け入れを義務付け、行政の信頼を獲得。岡部理事長は、新潟での経験(兼務の弊害)を基に、東京の行政文化(民間依存の低さ)を変革する必要性を主張。緊張感ある「癒着」関係を構築し、東京都指定社会福祉法人取得を目指している。

将来的には、荒川モデルを23区や東京都へ横展開。子供支援の強化、医療・福祉コラボ、AI相談システム構築を展望。山本氏は、こども家庭庁との連携やインクルーシブ教育の課題(保育所等訪問支援の学校可否決定ガイドラインの是非)を指摘。離島・中山間地での遠隔診療モデル(Dr.+Nurse+AI&PC)を参考に、相談支援のリモート化を提案した。

結論と示唆

懇談を通じて、相談支援事業の重要性が再確認された。収益性向上と質確保の両立が鍵で、ソラティオの特化戦略とデータ駆動型経営は、他事業者の参考となる。行政連携の深化と地域格差是正が急務であり、参加者らは東京都全体の改善に向け、政策提言やモデル構築を約束した。岡部理事長の数字意識と革新志向は、福祉業界の進化を象徴するものであり、希望を与える内容であった。