日本障害者歯科学会総会及び学術大会に参加:沖縄県宜野湾市

輝HIKARIの金子代表理事は、12月13日から15日まで、公益社団法人日本障害者歯科学会が主催する、第41回日本障害者歯科学会総会及び学術大会に出展・参加しました。


金子は、株式会社マイクロブレインとして、2012年から2014年に渉り、厚生労働省の障害者自立支援機器等開発促進事業の支援を受けて、自閉症のある方や、知的障害、また治療過程における先の見通しが困難なことにより、パニックや不安を起こしてしまう方へ、インフォームドコンセントの一環として、口腔ケア支援ソフト「はっするでんたー」を考案・開発しました。

はっするでんたーのかいはつの経緯について

今回、このはっするでんたーを開発するに辺り、日本障害者歯科学会に加入する先生方のご厚意もあり、沖縄総会へ出展いたしました。

詳細は、はっするでんたーホームページで掲載しています。

開発当初、毎日新聞でこのはっするでんたーの開発について掲載して頂きました。そちらの記事を改めて紹介いたします。(掲載日 2014年11月1日:毎日新聞)

歯科治療:幼児にイラスト説明 自閉症児の父、アプリ開発
毎日新聞 2014年11月01日
虫歯などの治療を前に、治療内容をイラストなどで幼児に説明して不安を和らげるアプリを、さいたま市のIT会社役員、⾦⼦訓隆(のりたか)さん(47)が開発している。⾃閉症の⻑男、真輝(まさき)君(8)が歯科の治療機器を怖がって苦労した経験を⽣かす。既に⼀部の病院で試験導⼊しており、14~16日に仙台市で開催される日本障害者⻭科学会で開発の取り組みが発表される。
開発中のアプリ「はっするでんたー」は、タブレット端末「iPad(アイパッド)」⽤。⼦供のイラストや写真で説明する。
登録されたさまざまな治療シーンから、個別の治療に沿って「エプロンをつけます」「お水が口の中に入ります」などのシーンを選ぶと、その日の治療の流れが分かる。
⼀部の大学病院の外来などで試作機が試験稼働している。発売は来春を⽬指す。
開発の原点は、真輝君が5歳の時、虫歯治療に連れて⾏った際の経験だ。⾃閉症など発達障害のある子供は刺激が
苦手で、音に敏感なことも珍しくない。多くの機器や鋭い治療⾳で真輝君はパニックに。危険防止の専用ネットで体を巻かれ、口を開ける器具を⼊れられた。真輝君は大泣きし、吐いた物が喉に入って呼吸困難を起こした。
⾦⼦さんは、真輝君が安全に治療を受けられる⽅法を求め、日本大松⼾歯学部付属病院の取り組みを知った。手製の絵カードで診療内容を⼦供に説明していた。真輝君は納得して治療を受けられた。「⾃分がソフトを作れば、音や動画も⼊れられ、もっと多くの歯科で使える」。そう考え、国の障害者⾃⽴⽀援に関する補助⾦を獲得し、専門医の助言を仰いで⼀昨年、医療用試作機が完成。関係学会で紹介すると、国外の医師や障害と直接関係ない小児歯科からも反響があったという。
⾦⼦さんは発達障害児の父親で作るNPO法人「おやじりんく(現 NPO法人輝HIKARI)」の代表も務めており、「障害のある人への⽀援ツールは、健常者にも役立つ。幅広く利用してほしい」と話している。

はっするでんたーの開発監修者の声

社会福祉法人JOY明日への息吹 理事長(日本障害者歯科学会 顧問)
緒方 克也先生

視覚支援はITの時代
 障害者が歯科医療を受ける時、絵カード等の視覚支援を用いられてから久しいが、ここ数年はいくつかの形でデジタル機器が導入されてきた。障害者とITは時代の先端というよりももはや日常的といわれる時代である。その証拠にかなり重度の障害児たちが、あちこちでデジタル端末を操作し、楽しんでいる姿を見ることができる。もちろん支援学校でもこれを積極的に取り入れ、教育や余暇の中で浸透している。それであれば、「はっするでんたー」なる視覚支援のIT化は当然であり、治療のための視覚支援のみならず歯科保健の支援グッズとしても有意義である。学術的研究でその有意義さを証明するのもいいが、研究よりずっと前に臨床の現場で有用性が広がろうとしている現実は見逃せない。
 歯科医療支援のデジタル端末である「はっするでんたー」は障害者の最善の利益として、必然性の高いものになっていくと思う。使われることによってプログラムはますます充実することを思うと、さらに進化した「はっするでんたー」の開発を障害者とともに期待したい。

岡山大学病院 スペシャルニーズ歯科センター長(日本障害者歯科学会 副理事長)
教授 江草 正彦 先生

頼りになる歯科のツアーガイドさん
 歯科治療は患者さんにとっては最もストレスの多い医療の一つである。初めての経験が苦手な人にとっては、できればガイドさん付きのツアー旅のようにスケジュールによる見通しがわかれば不安も軽減される。幼児から学童になって大きく成長できるのは、学校での時間割にそって学習する生活習慣があるからでもあろう。こんな旅のスケジュールや授業の時間割の役目をしてくれるのが、歯科治療における「はっするでんたー」です。
 絵・写真・映像・音により患者さんにわかりやすいように診療のスケジュールを作成できるタブレット型のデジタル機器である。歯科治療の順番と見通しがわかることで、一つ一つのステップのゴールへの達成感を得られることができ、自己肯定感を育むことが期待できる。私がノースカロライナ大学医学部の自閉症センターで研修した当時も発達障がいの子供たちは好んでコンピューターを使用していた。「はっするでんたー」は障害者歯科の現場に限らず、歯科治療の苦手な人にとっては頼りになる歯科のツアーガイドさんとなるであろう。

歯科医師の立場から見た「はっするでんたー」

「はっするでんたー」は、iPadアプリとして口腔ケアを支援する画期的なツールと言えるでしょう。歯科医師の立場から、その特徴と利点、そして改善点について詳細に説明します。

1. 患者教育の強力なツール

  • 視覚的な説明: 歯ブラシの持ち方、ブラッシング方法、フロスやデンタルフロスの使い方など、口腔ケアに関する様々なテクニックを動画やイラストで分かりやすく説明できます。これは、従来の言葉による説明だけでは理解しにくい患者さんにとって非常に有効です。
  • 口腔内の可視化: 口腔内の3Dモデルを用いることで、患者さん自身の口腔内をリアルに理解することができます。これにより、磨き残しの場所や歯周病の進行状況などを視覚的に示し、患者さんの口腔衛生への意識を高める効果が期待できます。
  • 具体的な目標設定: アプリ内で口腔ケアの目標を設定し、その達成度を可視化できます。患者さんは自分の努力が目に見えることで、モチベーションを維持し、継続的な口腔ケアを実践できるようになります。

2. 診療における効率化

  • 問診時間の短縮: アプリを用いて事前に患者さんの口腔ケアに関する情報を収集することで、診療時間の短縮につながります。
  • 患者さんの理解促進: アプリを用いた説明は、従来の説明よりも患者さんの理解度が高いため、診療時間の短縮につながります。
  • データ記録の簡素化: 患者さんの口腔ケアの習慣や状態をアプリで記録することで、歯科医師はより正確に患者さんの状況を把握することができます。

3. 患者さんとのコミュニケーション向上

  • 積極的なコミュニケーション: 患者さん自身もアプリを通して口腔ケアについて積極的に学ぼうとするため、歯科医師とのコミュニケーションも活発化します。
  • 患者さんの不安解消: 口腔ケアに関する疑問や不安をアプリを通して解消することで、患者さんの不安を軽減することができます。
  • 信頼関係構築: アプリを通して患者さんとの信頼関係を築き、より効果的な口腔ケアの指導が可能になります。

4. 改善点

  • 個別性の向上: 患者さん一人ひとりの口腔内の状況やニーズに合わせて、アプリの内容をカスタマイズできる機能があればより効果的です。
  • データ連携: 他の医療機器やシステムとのデータ連携が実現すれば、より包括的な口腔ケアが可能になります。
  • 歯科医師向け機能: アプリ内で歯科医師が患者さんの口腔ケア状況を管理したり、指導内容を記録したりできる機能があれば、より効率的な診療が可能になります。

5. まとめ

「はっするでんたー」は、患者教育、診療効率化、患者さんとのコミュニケーション向上など、様々な面で歯科診療に貢献する可能性を秘めたアプリです。今後の更なる発展によって、より多くの歯科医師が活用し、患者さんの口腔ケアを向上させることを期待しています。