障害者差別解消法の内閣府での取り組みについて
内閣府が行っている、障害者差別解消法の取り組みについて統括官の説明をもとに要約しました。
2025年2月現在の内容
まず障害者差別解消法の成立背景と現状が示された。平成25年に制定された同法は、障害のある人への不当な差別的取扱いの禁止や合理的配慮の提供を求めるものであり、令和3年の改正を経て行政機関のみならず民間事業者にもその提供義務を拡大している。これにより、障害当事者が日常生活や社会活動で直面する課題への対応を強化する土台が整えられた。
しかしながら、各省庁における「対応要領」が形骸化しているのではないかという問題提起があった。対応要領とは、行政機関の職員が障害のある人に合理的配慮を提供するための具体的な指針を示した文書であり、内閣府や各省庁がそれぞれ作成しているにもかかわらず、職員への周知や研修が十分でない実態が浮き彫りとなった。そこで今後は、全職員に対する研修の毎年実施や、当事者を講師として招いた実践的なプログラムの導入など、より実効性の高い対策を進める方針が示されている。
さらに、令和5年度の基本方針には「ワンストップの相談窓口」の設置が明記され、実際に内閣府を中心に試行が始まっている。障害のある人やその家族からの相談を一括で受け付け、関係機関へ適切に繋ぐ仕組みを整備することで、既に4000件以上(昨年12月まで)の相談が寄せられた実績もある。相談を受けただけで終わらず、問題解決に向けて当事者の納得を得るところまで伴走するのが狙いであり、今後は解決に至らなかったケースの質的向上にも注力していくという。
同講演では昨年12月末に決定された「行動計画」にも触れられた。これは旧優生保護法をめぐる最高裁判決(令和5年7月)により、強制不妊手術等を不当と認めた流れを受けて策定されたものである。岸田総理を本部長とする政府の推進本部で「障害者が希望する生活の実現」「公務員の意識改革」「ユニバーサルデザイン2020行動計画の強化」「当事者参加の拡大」という4つの指示を具体化するため、当事者ヒアリングを連続的に行い、短期間でまとめられた点が特徴である。とりわけ、教育現場でのインクルーシブな取り組みや、地域での共生を推進する支援体制の整備など、多岐にわたる施策が盛り込まれた。また、法制度のあり方についても、旧優生保護法の検証作業を踏まえつつ差別や偏見のない社会を実現するための検討を進めるとされている。
内閣府としては、障害者政策委員会(障害者権利条約に基づく国内機関)などを通じ、作成された行動計画のフォローアップを行う考えだ。さらに、三原じゅん子大臣がG7障害担当大臣会合への参加と同時に宣言に署名し、日本におけるデフリンピックの開催支援や偏見・差別根絶の訴えを国際的に発信した事例にも言及。今後はインクルーシブなイベントを国内外に広く周知する方針で、障害のある人とない人が共に参加できる場を増やすことを重視している。こうした普及啓発イベントを「スペシャルな場所」で開催し、国民の関心を高めたいとの意欲が示された。
総じて、障害者差別解消法の取り組みは法律の条文を整備するだけでなく、現場での実効性や社会全体の意識改革、そして当事者の声を反映させる仕組みづくりが重要だという認識が共有されている。旧優生保護法をめぐる痛ましい教訓を風化させず、政府・当事者・関係団体が連携しながら、誰もが尊厳をもって暮らせる共生社会の実現に向けて努力を続けていく姿勢が強調されたといえよう。
