高次脳機能障害者の支援に関する法律案が完成
今回、山本博司参議院議員の活動報告で挙がりました、高次脳機能障害者の支援に関する法律案についてお知らせします。
高次脳機能障害者の支援については当団体の金子訓隆代表理事も深く関わっており、交通事故に巻き込まれて高次脳機能障害となってしまった児童の親御さんから切実な相談を受けて、さいたま市議会議員の齊藤健一市議と共にさいたま市内の高次脳機能障害支援についての拡充を訴えました。
また、埼玉県議会議員の小早川県議も交えて、埼玉県での支援も拡充、当事者の子どもを抱える親御さんの支援団体、ハイリハキッズさまと小児高次脳機能障害の支援について意見交換しました。
また以前は、大阪にある、NPO法人クロスジョブにて、高次脳機能障害者の就労支援についての課題提起や、各地域での支援体制の確認等行ってきました。
その他、国の施策支援やイベント啓発活動なども参加。
高次脳機能障害について、法制化に向けて全国で様々な活動の応援をして参りました。
今回、高次脳機能障害者の支援に関する法律案の骨子が完成したとのことです。
以下は山本博司参議院議員のfacebookから引用します。
【「高次脳機能障害者の支援に関する法律案」党内審査で了承(公明党政調全体会議、部会長会議)】
今月3日午後に、公明党政調全体会議、部会長会議が開催され。「高次脳機能障害者の支援に関する法律案」の審査が行われ、了承されました。
【説明内容】
高次脳機能障害支援法案について、ご説明致します。
超党派の「高次脳機能障害者の支援に関する議員連盟」における精力的な議論を経て、先月27日に法案骨子がまとめられた後、28日の「厚生労働部会・障がい者福祉委員会・高次脳機能障害等支援対策PT合同会議」で了承されました。
高次脳機能障害とは、怪我や病気により脳に損傷を負い、言語や記憶等の機能に障害が起き、注意力や集中力の低下、感情や行動の抑制がきかなくなるなどの精神・心理的症状が現れ、日常生活や社会生活に制約がある状態で、患者数は全国で23万人と推計されています。
高次脳機能障害は外形上判断しづらく、その特性の理解も進んでいないなどの理由で、患者と家族は適切な支援を受けることができず、日常生活や社会生活に困難を抱えているとの声が、当事者の方々から寄せられております。
当事者・家族の会として「日本高次脳機能障害友の会」がありますが、10年前から切実な声が届けられ、公明党として2018年PTを設置。ヒアリングや視察を重ね、2023年自民党との勉強会を経て、2025年に超党派の議員連盟が立ち上がり、本日に至りました。
本法案は、このような現状を踏まえ、高次脳機能障害への理解を促進するとともに、高次脳機能障害者の自立及び社会参加のための生活全般にわたる支援を図るため、所要の措置を講じようとするものであります。
その主な内容は、第一に、基本理念として、
・自立と社会参加の機会が確保され、また、尊厳を保ちつつ他者と共生することが妨げられないこと。
・社会的障壁の除去に資すること。
・個々の事情に応じ、また、関係者の連携の下に、あらゆる段階で切れ目ない支援が行われること。
・居住する地域にかかわらず等しく適切な支援を受けられること。 の四つを定めております。
第二に、基本的な支援施策として、13の項目を掲げております。
高次脳機能障害者やその家族に対する支援施策
(1)地域での生活支援
(2)教育的支援
(3)就労の支援
(4)差別・いじめ・虐待の防止といった権利利益の擁護
(5)司法手続における意思疎通のための配慮
(6)家族等への支援
(7)相談体制の整備
(8)情報の共有の促進
の8つを、また、その他の支援施策として
(1)国民に対する普及及び啓発
(2)医療業務従事者等への知識の普及及び啓発
(3)地方公共団体や民間の団体への支援
(4)専門人材の確保
(5)調査研究等
の5つを、それぞれ定めております。
これらの支援施策は、発達障害者支援法を参考にまとめたものとなっております。 そして、これらの施策を計画的に策定・実施し、さらに、実施した施策を公表させることで、体系的・実効的な支援の実施を確保するものとなっております。
第三に、このような支援施策を実施する体制として、高次脳機能障害者支援センターの設置、専門的な医療機関の確保、当事者や関係機関等から構成される地域協議会の設置について定めております。
第四に、この法律は、令和8年4月1日から施行することを目標としています。
以下に高次脳機能障害について解説いたします。
🔷 高次脳機能障害とは?
高次脳機能障害とは、脳の損傷によって「記憶」「注意」「言葉」「感情のコントロール」「計画・判断」など、人間らしい知的な働き=「高次脳機能」に支障が出る障害です。
主に以下のような場面で生じます:
- 脳卒中(脳出血・脳梗塞)
- 脳外傷(交通事故・転落などによる頭部外傷)
- 脳炎・脳腫瘍などの病気
- 低酸素脳症(心停止などで脳に酸素が行かなくなる)
🔷 高次脳機能の働きとは?
私たちが日常生活を円滑に送るには、「考える力」や「感情のコントロール力」「コミュニケーション力」など、目には見えない脳の機能が重要です。
この「高次脳機能」は大きく以下のように分けられます:
🔷 よくある症状の例
以下のような症状がよく見られます:
- 約束をすぐ忘れる、同じことを何度も聞く(記憶障害)
- 物事に集中できない、注意がそれる(注意障害)
- 家事や仕事で手順が分からなくなる(遂行機能障害)
- 怒りっぽくなったり、感情が不安定(情動コントロールの問題)
- 他人との会話がかみ合わない(社会的行動障害)
🔷 障害が見えにくい理由
高次脳機能障害の特徴は「見た目では分からない」ことです。体は元気に動いていても、脳の内部での機能が損なわれているため、周囲からは理解されにくく、「怠けている」「わがまま」など誤解されてしまうこともあります。
🔷 支援のポイント(専門家の観点から)
- 本人理解と周囲の理解の両立が重要
→ まず「なぜできないのか」を本人も家族も理解すること。 - リハビリ(作業療法・言語療法・心理的支援)
→ 症状に応じて専門職(OT、ST、公認心理師など)が介入。 - 生活支援と就労支援
→ 福祉サービス(例:自立支援医療、障害者手帳、就労移行支援)や地域包括支援センターと連携。 - 記録とルーティン化
→ メモ・スマホ・カレンダー活用や、一日の行動を固定パターンにすることで混乱を減らす。
🔷 高次脳機能障害を持つ方への接し方のヒント
- 指示はシンプルに、一つずつ
- 感情的にならず、ゆっくり丁寧に
- 否定せず、できたことを褒める
- 支援が必要でも、「本人の尊厳」を大切にする
🔷 専門的支援につながるには?
- 主治医(脳外科・神経内科・リハビリ科)への相談
- 高次脳機能障害支援センター(全国に設置)
- 地域包括支援センターや相談支援専門員による連携
- 精神保健福祉士や公認心理師による心理的支援
🔷 最後に:周囲の理解が最も大切
高次脳機能障害は、「その人らしさ」を取り戻すまでに時間がかかることもあります。本人の困り感に寄り添い、「できること」に焦点を当てた支援が回復と社会参加のカギとなります。
以上、この法案が可決されることで、高次脳機能障害に苦しむご本人、ご家族、関係者の方々に支援が多く行き届くようこれからも応援して参ります。