「おやこを照らす光に」児童発達支援事業に取り組む「ゆずりは」訪問 太田代表と懇談

「おやこを照らす光に」児童発達支援事業に取り組む「ゆずりは」訪問 太田代表と懇談
6日午後、株式会社ハビリテが運営する徳島市内の障害児特化型認可保育園「ゆずりは保育園」を山本博司氏とシーアイ・パートナーズ 家住社長本田専務(輝HIKARI理事)、らと共に視察。地元市議の藤田真由美徳島市議も同席。
太田恵理子代表(株)≪ハビリテ社長≫らと子育て支援等で懇談・意見交換しました。

ゆずりは|保育×医療のインクルーシブ施設

徳島市内にて、認可保育園と児童発達支援事業所・放課後等デイサービスを運営しております。 ゆずりはの「りは」は「リハビリ」の「りは」。 リハビリや療育を受けること…

「おやこ支援室 ゆずりは」「ゆずりはplus」「ゆずりは保育園」の創立者の太田代表。太田代表は、大学卒業後、機械メーカーに就職。息子さんに障害があり、保育園に入れなかったことを機に、「おやこ支援室ゆずりは」立ち上げを決意。

2019年4月、徳島市庄町にてリハビリ特化型児童発達支援『おやこ支援室ゆずりは』を開設。0歳から6歳の未就学児のお子様を対象とした児童発達支援事業所。
小児専門の理学療法士や作業療法士による個別リハビリ他、早期療育に特化した支援を行います。 ビジョントレーニングや感覚統合を取り入れ、お子様1人1人に合わせたきめ細かい療育を提供されています。

また重症心身障害児のお子様向け児童発達支援『ゆずりはcare plus』を。さらに児童発達支援と認可保育園を目指した今回訪問の「ゆずりは保育園」を2022年4月開設。
保育園と児童発達支援事業所を併設することで、通園中に個別リハビリを受けることが可能となりました。障害児支援に特化した認可保育園は徳島では初めてであり、全国的にも極めて珍しい施設となっています。保育園に通っている間に、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士らによる専門的な 個別リハビリを受けることもできます。

太田代表の案内で施設内を見学。ゆずりは保育園・ゆずりはplusの施設全体に徳島県産の杉を使用しているため、匂いや感触など五感から天然杉の感覚と自然のぬくもりを感じられる園舎となっています。認可保育園、重心児・医療的ケア児支援・放課後等デイサービス・訪問看護などが同じ場所に。

0歳から受け入れ可能で、保育+リハビリ+看護がトータルでできる施設は全国初です。障害児も健常児も同じ場所での生活は、インクルーシブ保育・共生社会そのものです。看護師、理学療法士、言語聴覚士、保育士など職員数43名。利用者は80名を超えています。

【訪問者】
・家住 教志(㈱シーアイ・パートナーズ 代表取締役)
・山本 博司(同社 顧問:元参議院議員)
・本田 信親(同社 専務取締役)
・谷部 有彦(同社 執行役員 品質管理部長)
・下鳥 洋樹(㈱Reno/㈱Reno Wellness 代表取締役)
・江本 尚子(㈱フューチャージニアス 執行役員)
・藤田真由美徳島市議
・金子 訓隆(NPO法人HIKARI 代表理事)

【訪問先(株)ハビリテ】
・太田恵理子社長
・高原純一経営戦略部長
・中村麻理奈管理者(おやこ支援室ゆずりは)
・溝渕貴美子児童発達支援管理者(ゆずりはPlus)

【太田恵理子さんプロフィール】
1986年9月5日生まれ。徳島県上勝町出身。香川大学卒業後、厨房機器メーカーに勤務。2017年に水頭症と診断された長男を出産後、預ける施設が見つからず復職をあきらめる。「ないなら自分でつくるしかない」との思いで起業し、2018年に「ハビリテ」を設立。19年、障害をもつ未就学児のための発達支援施設を「おやこ支援室ゆずりは」を開業。
その後、重症心身障害児のお子様向け児童発達支援『ゆずりはcare plus』。さらに児童発達支援と認可保育園を目指した「ゆずりは保育園」を開設。

以下は見学後にざっくばらんな意見交換を行ったときの内容の要約です。多岐に渉った課題の意見交換となりました。


徳島県徳島市で医療的ケア児支援と保育園を一体的に運営する先進的な施設「ゆずりは」にて、同社の太田社長と、複数の福祉事業法人によるグループ経営を展開するCIパートナーズの役員らによる座談会が開催された。ざっくばらんな雰囲気の中で始まったこの懇談は、福祉業界が直面する課題、革新的な事業モデル、そして未来への展望について、熱のこもった議論が交わされる場となった。

第一章:CIパートナーズの事業戦略——「チームで戦う」という思想

懇談の序盤、CIパートナーズの家住氏が、自社の事業モデルと各役員の役割について詳細な説明を行った。それは、単なる事業紹介に留まらず、日本の福祉業界が抱える構造的な課題に対する一つの明確な回答を示すものであった。

個々の専門性を結集する経営体制

家住氏はまず、自身の役割を「戦略を立て、新しい事業を生み出すこと」と定義した。その具体的な事例として、大学内に存在する発達障害のグレーゾーンの学生が就職活動で困難を抱えているという課題に対し、「インクルーシブキャリアセンター」の設立を構想したエピソードを挙げた。大学から毎年同じ相談を受けることに業を煮やし、「同じ悩みを聞くのが嫌だ」という強い問題意識から、既存のキャリアセンターに相談支援機能を付加し、収益モデルを構築するという新しい事業モデルを考案したという。このようなゼロからイチを生み出す役割を担うのが話者2であり、そのアイデアを事業化し、数値管理や経営の根幹を支えるのが本田氏、グループ全体の支援コンテンツ開発や品質統括を担うのがもう一人の役員、そして関東エリアのチームを率いる経営者、国の法改正の動向をキャッチアップし、制度への提言も行う山本氏といった、多岐にわたる専門性を持ったメンバーがそれぞれの役割を担っている。

特筆すべきは、これらのメンバーがほぼ全員、元は異なる法人の経営者であったという点だ。「目指しているところは、ちゃんと療育を正しく提供し、当事者の方々が困らない社会を作ること。ただそれだけの共通点で合体している」と家住氏は語る。個々の経営者が持つ強みをグループ全体で共有し、自分一人では成し得ない大きなビジョンを実現するためにチームを組む。この「背中を預けられる仲間」の存在が、CIパートナーズの最大の強みであると強調された。

小規模事業者の課題を解決する「グループジョイン」

家住氏は、福祉業界、特に放課後等デイサービスの分野では、全国に約2万施設ある中で、一つの法人による運営事業所数が2〜3箇所に留まるケースが圧倒的に多いという現状を指摘した。これらの小規模事業者は、「人が採れない」「制度改正に対応できない」「資金調達が難しい」「バックオフィス業務が煩雑」といった共通の悩みを抱えている。これは、各事業者が狭いエリアで人材やリソースを奪い合っていることに起因する。

CIパートナーズが提唱する「グループジョイン」は、この課題に対する直接的な解決策である。まず、多くの事業者が共通して困る人事、制度、資金調達、請求業務といったバックオフィス機能を、グループ本部で一括して担う。これにより、現場の事業者は本来注力すべき支援の質の向上に集中できる。この仕組みは、最初は本部の維持コスト(年間約8000万円)が負担となるが、参画する法人が増えることで「規模の経済」が働き、一社あたりのコストを低減させ、より強固な経営基盤を構築できる。

このスキームは、単なるM&A(買収)とは一線を画す。グループに加わる法人の代表者がこれまで築き上げてきた屋号や支援技法、地域との関係性を最大限に尊重し、何も変える必要はない。むしろ、「皆さんが本当にやりたかったことを遂行できるように必要なサポートをする」というスタンスを徹底している。その結果、元の代表者は一法人の経営者から、グループ全体の数値管理や支援品質の統括といった、より広く、高いステージで自身の専門性を発揮する役割へと移行していく。これは、経営者の尊厳を保ちつつ、共に成長していくという世界観に基づいている。

規模を活かした資金調達と未来への投資

この事業モデルの有効性は、資金調達の規模にも表れている。単独の法人であれば1億円の調達も困難な中、CIパートナーズはグループ全体でエクイティファイナンスにより6億円、さらにデットファイナンス(融資)で4億円以上、合計10億円規模の資金調達を半年間で実現した。その主な使途は、新たな仲間を迎え入れるための事業承継(M&A)資金である。

ただし、そのプロセスにおいても独自の哲学が貫かれている。株式の取得は形式上必要だが、まずは経営者に一旦経済的なゴール(イグジット)を提供することを優先する。その上で、「本当にやりたかったことを、これからは一緒にやろう」と呼びかけ、新たなステージでの挑戦を共に始める。このウェットな関係性こそが、多くの経営者の共感を呼び、グループ拡大の原動力となっている。

第二章:「ゆずりは」の挑戦と制度の狭間で生じる「歪み」

CIパートナーズの革新的なモデルに深い感銘を受けたバビリテの太田社長は、自社の設立経緯と現状について語り始めた。それは、先進的な理念と、それを阻む制度の壁との間で奮闘する、現場のリアルな姿を浮き彫りにするものだった。

保育と療育の「真の一体化」を目指して

太田社長が「保育と療訪を一緒にする」という構想を抱いたのは約4年半前。自身の体験からその必要性を痛感し、先行事例として横浜の「泥んこ会」などを研究した。しかし、多くの事例が保育に療育が付随する形であったのに対し、ゆずりはは当初から両者を対等に、一体のものとして運営することを目指した。話者2も「保育が主体で、療育がそれに付随するという形が多い中、ここまで思い切って一体でやっているところは他にない」と、その先進性を高く評価した。

このモデルは、障害の有無に関わらず、すべての子どもが同じ環境で育つインクルーシブな社会の縮図であり、CIパートナーズの役員からも「世の中にいっぱいあるべきだ」「どうやったら作れるのか」と、強い共感と関心が寄せられた。

行政の縦割りによる機会損失

しかし、この先進的な取り組みは、行政の縦割りという根深い課題に直面していた。ゆずりはの関係者である話者3が、その具体的な「歪み」について問題を提起した。

問題の核心は、保育園の利用者を決定する窓口(市町村の保育課など)と、児童発達支援の利用者を繋ぐ窓口(相談支援専門員や病院など)が完全に分離しており、連携が全く取れていない点にある。ゆずりはは、保育園の定員(30名)に加え、児童発達支援の枠(約21名分)も持ち、多くの障害児を受け入れるキャパシティがある。本来であれば、療育の必要性が高い子どもが、この施設の存在を知り、保育園と児童発達支援の両方のサービスをシームレスに利用できることが理想である。

しかし、行政は「ゆずりはを数ある保育園の一つ」としてしか認識しておらず、施設の特性を考慮せずに利用者を振り分けてしまう。その結果、療育ニーズのない子どもで保育園の定員が埋まってしまい、本当にこの施設を必要としている障害児が、保育園が満員であることを理由に利用できないという本末転倒の事態が発生している。これは、まさに「先頭を走る者が直面する過酷な道」であり、新しいモデルが既存の制度の枠組みの中で正しく評価されず、そのポテンシャルを十分に発揮できていない現状を示していた。

第三章:制度の壁を乗り越えるための多角的な戦略

この深刻な課題に対し、座談会は具体的な解決策を探るフェーズへと移行した。CIパートナーズのメンバーや太田社長から、既存の制度を戦略的に活用するアイデアや、発想を転換するアプローチが次々と提示された。

1. 相談支援事業の内部化と保育所等訪問の活用

金子氏は、「自社で相談支援事業所を持つべきだ」と提案した。相談支援専門員が自社にいれば、地域の保育園に通う子どもたちの相談を受け、その子に本当に必要な支援として自社の児童発達支援を計画に位置づけることが可能になる。いわゆる「マッチポンプ」と表現されたが、利用者のニーズに即した適切なサービスを能動的に提供するための有効な戦略である。さらに、保育園と児童発達支援は重複して利用できるため、他の保育園に通う子どもを日中一時的に預かり、療育を提供してまた保育園に戻すといった柔軟なサービス提供も可能になる。

2. 新制度「誰でも通園制度」の先行活用

太田社長は、2026年度から本格実施される「誰でも通園制度」に着目した。これは、保育園などに通っていなくても、時間単位で誰でも利用できる新しい制度である。受給者証も不要で、利用のハードルが非常に低い。この制度の登録事業所となり、まずは体験的に施設を利用してもらうことで、ゆずりはのインクルーシブな環境の素晴らしさを保護者に直接体感してもらう。単価は安いため、それ自体で大きな収益にはならないが、施設の価値を広めるための強力なPRツールとなり得る。この制度を入り口にファンを増やし、本格的な利用に繋げていくという戦略だ。

3. 行政への働きかけと国の補助金活用

話者2は、よりマクロな視点から、こども家庭庁が令和7年度予算として計上している「地域障害者支援体制強化事業」のような国の動きに言及した。インクルーシブ保育の推進には多額の補助金が用意されており、徳島市がその予算を活用するよう働きかけることの重要性を示唆した。地域の議員とも連携し、制度そのものを地域の実情に合わせて動かしていくという視点である。

4. 「待ち」から「攻め」へ——他の保育園への直接営業

最も議論が白熱したのは、「他の保育園へ直接営業をかける」というアイデアだった。行政からの紹介を待つのではなく、地域で障害児の受け入れに困難を感じているであろう他の保育園に対し、「何か困っていることがあれば、うちの専門スタッフがサポートしますよ」と連携を持ちかける。障害児保育のノウハウを提供することで信頼関係を築き、対応が難しいケースをゆずりはに紹介してもらうという、Win-Winの関係を構築する。これは、自社の強みを活かして地域の福祉リソース全体の質を向上させると同時に、自施設の利用者確保にも繋がる、極めて戦略的なアプローチであった。

第四章:医療との連携——福祉の未来を拓く新たな構想

懇談の終盤、話者2はCIパートナーズが現在構想している、さらに壮大なビジョンについて語った。それは、医療・療育・保育を三位一体で提供する新しいモデルの構築である。

現在、群馬県や長崎県で具体化を進めているこの構想は、地域の小児科クリニックと連携し、その隣に児童発達支援事業所と保育園を併設するというものだ。このスキームでは、医師が「診断」と「医学的根拠に基づく支援計画の作成」を担い、CIパートナーズが持つ豊富なノウハウを活かして「療育コンテンツの提供と運営」を担う。

この連携は、双方に大きなメリットをもたらす。福祉事業者側は、医学的なエビデンスに基づいた質の高い支援を提供でき、保護者からの信頼も厚くなる。一方、医師側は、診断はできても療育のノウハウがないという弱みを補完できる。さらに、CIパートナーズが運営ノウハウやバックオフィス機能を提供し、FC(フランチャイズ)展開を支援することで、医師は経営のリスクを抑えながら新たな事業を展開できる。

このモデルが目指す最大の目的は、社会課題の解決にある。現状では、子どもの発達に不安を感じても、専門医の診断を受けるまでに数ヶ月から1年待ちという状況が常態化している。診断が遅れることで、子どもの脳が最も発達する「ゴールデンエイジ」を逃してしまう。医療と療育が一体化し、地域のクリニックで迅速な診断と療育の導入が可能になれば、この「診断待ち」問題は解消され、多くの子どもたちが適切な時期に適切な支援を受けられるようになる。

これは、小児科医だけでなく、精神科医や歯科医など、様々な医療分野との連携の可能性も秘めており、日本の福祉サービスのあり方を根底から変革し得る、壮大かつ緻密な構想であった。

結論:共感から生まれる新たな連携への期待

座談会を通じて、CIパートナーズが掲げる「チームで業界の課題を解決する」というマクロな事業戦略と、ゆずりはが実践する「保育と療育の真の一体化」というミクロな現場での挑戦が、深く共鳴し合った。ゆずりはが直面する制度の壁という具体的な課題に対し、CIパートナーズの持つ多様な視点と経験から多角的な解決策が提示され、議論は未来志向の具体的なアクションプランへと昇華していった。

異なるアプローチで同じ山の頂を目指す両者が、互いの強みを理解し、深く共感したこの日の懇談は、今後の協業や連携を強く予感させるものとなった。個々の事業者の情熱と、それを支え、スケールさせるプラットフォームが融合する時、日本の福祉業界は新たなステージへと進化していくに違いない。