東京コロニー大田福祉工場における「障害者デジタルしごと応援事業」視察:大田区

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【視察概要】
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日 時:2026年5月11日(月)
場 所:東京都大田区「社会福祉法人 東京コロニー 東京都大田福祉工場」
視察事業:日本財団「障害者デジタルしごと応援事業」

主な出席者(外部):
 竹谷とし子参議院議員(公明党代表)、川村雄大参議院議員、原田大二郎参議院議員
 山本博司氏(日本財団アドバイザー/前参議院議員)
 日本財団:竹村利道シニアオフィサー、萩原康太郎チームリーダー ほか

施設側出席者:
 朴沙羅統括部長、浜野治事業課長、吉田優子事業課長(デジタル事業所管)

輝HIKARI出席者:
 代表理事 金子 訓隆

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【施設概要:東京都大田福祉工場】
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東京都大田福祉工場は、就労継続支援A型・B型、就労移行支援、就労定着支援の機能を持つ多機能型の障害福祉サービス施設です。今から51年前に都立として設置され、15年前に民営化。以来、官公庁・東京都・区市町村・公共団体・一般企業まで幅広い顧客基盤を持つワンストップ印刷工場として実績を積み重ねてきました。

A型利用者については、一般の正規従業員と給与・処遇に差を設けておらず、職業的スキルと経験が正当に評価されます。2023年度のA型利用者の平均年収は賞与込みで約410万円に達しており、障害者就労の先進的モデルとして高く評価されています。

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【デジタル化への挑戦:日本財団との連携】
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印刷業界全体が「斜陽産業」とも言われる昨今、大田福祉工場は2021年より日本財団の支援を受け、国立国会図書館の蔵書デジタル化事業に着手しました。障害者施設として日本初の取り組みです。

日本財団は、専用スキャナー等の環境整備費用を1拠点あたり約1億円規模・100%補助で支援。この事業の導入により、B型利用者の工賃は月2万円程度から7〜10万円規模へと大幅に改善されました。

【工賃の変化】
 事業開始前(B型平均工賃):月額 約2万円
 デジタル化導入後(B型平均工賃):月額 約55,000円(全国トップ水準)

現在、日本財団が優先調達等の枠組みで国立国会図書館から受注し、全国13か所の障害者施設に委託する形で、年度内に約3万冊分の画像データを納品する体制が整っています。大田福祉工場以外にも、神奈川県庁・川崎市役所などの行政文書デジタル化も受注するなど、着実に職域を拡大しています。

■ 作業体制と工程の工夫
1ページずつの清掃から専用スキャナーによる撮影、二重の画像検査まで、細分化された工程を障害のある利用者が担っています。今年度からは、各工程を動画マニュアル化し、「どこまでならできそうか」を本人と一緒に開拓するアプローチで、それぞれのスキルに応じた参加が可能になっています。品質管理・工程管理を担う「文書情報管理士」が在籍し、高い品質を維持しています。

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【質疑応答:意見交換の様子】
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視察後の意見交換では、デジタル事業の可能性や利用者の成長について深い議論が行われました。

Q. スキャン以外のデジタル業務への展開可能性は?
A. スキャンに付随する「OCR加工(検索機能付きデータ化)」は手間がかかる一方で単価が高く、収益向上に大きく寄与しています。また、B型利用者が過去に数万件規模のタイトル入力作業を担った実績もあり、着実に職域を広げています。

Q. 生産管理・営業など管理業務に知的障害のある方は関わっているか?
A. 現在、スケジュール管理や顧客対応を伴う生産管理の中核は精神障害のあるスタッフ等が担っています。

Q. 利用者の意欲・キャリアアップをどのように促しているか?
A. B型からA型へ昇格し、現在はデジタル事業係のスタッフとして活躍している事例もあります。動画マニュアルを活用し、できることを一つひとつ本人と一緒に広げていくアプローチを大切にしています。

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【現場からの要望:制度課題への提言】
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視察・意見交換を通じ、東京コロニー現場責任者から制度面・外部環境に関する率直な意見が寄せられました。輝HIKARIとしても、以下の課題を政策提言活動の重要テーマとして共有します。

① 優先調達制度の形骸化への懸念
 ・大手企業の特例子会社が親会社の名義で入札に参入し、実質的な業務の多くを親会社(大手印刷会社)が担うケースが見受けられる。これが本当に障害者の工賃向上につながっているか、疑問を感じる。
 ・一般競争入札で自力勝ち取った案件であっても、自治体側では「優先調達実績(ノルマ達成)」としてカウントされる。コストを削り利益を圧縮してまで入札努力をしている現場の実態に即した制度の見直しを求めたい。

② 国際情勢によるコスト増
 ・ウクライナ情勢等の影響により、インク・用紙・電気代が大幅に高騰している。
 ・特殊な用紙(コート紙・マット紙など)が入手困難になっており、取引先からの「囲い込み」による制限のアナウンスが届くなど、経営に深刻な影を落としている。

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【視察を終えて:輝HIKARIとしての所感と今後の展開】
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大田福祉工場のB型平均工賃が月額約55,000円という全国的に見ても突出して高い水準にあるのは、長年の営業努力と「デジタル化という次の手」への果敢な挑戦の結果に他なりません。そして、その挑戦を可能にしたのは、日本財団による資金・環境整備の支援と、品質管理体制を担う専門人材の存在でした。

今回の視察から得た学びを、埼玉県さいたま市における輝HIKARIの支援活動に活かしていく観点から、特に重要と感じた点を以下に整理します。

【重点テーマと主な示唆】

■ 動画マニュアルによるステップアップ支援
 利用者一人ひとりのスキルに合わせた段階的な職域拡大の仕組みは、当法人の放課後等デイサービス・就労支援においても応用可能な重要モデル。

■ デジタル分野への職域拡大
 高付加価値なデジタル業務への参入が、工賃・処遇の大幅改善に直結することを実証している。地域内の行政・企業との連携を視野に入れた検討を開始したい。

■ 優先調達制度の運用改善への提言
 形骸化への問題意識は当法人も共有。今後の政策提言活動・議員連携において積極的に取り上げる。

今後も関係各所と連携し、障害のある方がその能力を最大限に発揮できる環境づくりに取り組んでまいります。今回の視察の機会を設けていただいた日本財団、竹谷とし子参議院議員はじめ公明党の皆様、そして東京コロニー大田福祉工場の皆様に、心より御礼申し上げます。

なお、5月12日の公明新聞1面で、この視察について掲載されました。以下がその記事です。

■障がい者の賃金向上へ/都内で竹谷代表ら  竹谷とし子代表は、働く障がい者の賃金・工賃向上を進めるため、日本財団の支援で行政文書や国立国会図書館の蔵書のデータ化を請け負う東京都内の就労支援施設を訪問した。川村雄大、原田大二郎両参院議員や竹平智春都議、同財団の山本博司氏(元公明党参院議員)らが同行した。
江戸川区にある「自立支援センターむく」が運営する就労継続支援B型「デジタルラボえどがわ」では、区の紙文書をスキャン機器でPDF化し、付箋や名刺の情報も含めて保存するなどの作業を見学。担当者からは、区から仕事をもらうことで一般企業への信頼を構築し受注につながる期待などを聴いた。印刷事業を手がける東京都大田福祉工場(大田区)では、国会図書館蔵書のデータ化が賃金・工賃向上に寄与していると説明を受けた。
視察後、竹谷代表は、賃金・工賃が上がっていく仕組み作りの推進とともに「デジタル分野の仕事が全国の事業所で普及されるよう後押ししたい」と力を込めた。