こども家庭庁及び岩永竜一郎教授との発達障害児支援に関する意見交換会:永田町
2026年4月21日、永田町の参議院議員会館にて、長崎大学大学院の岩永竜一郎教授とこども家庭庁幹部との意見交換会に参加いたしました。
会場となった原田大二郎参議院議員事務所には、岩永教授のほか、山本博司全参議院議員、元厚労省の小野寺徳子氏、こども家庭庁から源河真規子審議官、今出大輔発達障害児支援専門官らが顔を揃えました。

今回の会合は、3月に長崎で懇談した際、岩永教授から「現場の課題を直接国に届けたい」との要望をいただいたことが契機となっています。岩永教授は発達障害学の権威であると同時に、自閉症スペクトラムのお子さんを持つ親としての顔も持ち、家族支援の重要性を誰よりも深く理解されています。
岩永教授による提言:5歳児健診後のフォローアップ体制
会議の核心は、岩永教授による「5歳児健診後のフォローアップ体制づくり」に関するプレゼンテーションでした。教授が長年取り組んできた長崎県での事例をベースに、現行制度の課題と解決策が示されました。
健診後の「支援の空白」
5歳児健診は、3歳児健診で漏れてしまったリスク児や、集団生活の中で新たに課題が見つかった子供たちを拾い上げる極めて重要な機会です。しかし、健診を実施すること自体が目的化してしまい、その後の具体的なフォローアップや二次精査の体制が自治体によって大きくばらついている現状が指摘されました。
現状の課題: 多くの自治体では、健診で「リスクあり」と判定されても、その後の個別指導や医療機関への橋渡しが不十分であり、担当医や保護者が「どうすればいいか」と困り果てるケースが散見されます。
精査の難しさ: 発達障害の診断は白黒はっきりつけることが難しく、専門医が1回のスクリーニングで判断を迫られることにジレンマを感じています。

3層モデルによる支援の個別化
岩永教授が提案するのは、ポジティブ行動支援(PBS)や自然な発達的行動介入(NDBI)に基づいた「3層モデル」の支援体制です。
第1層(ユニバーサルな支援): 一般の保育園や幼稚園において、環境調整やポジティブな声掛けを行い、全ての子供たちが過ごしやすい環境を作る。
第2層(小集団・専門的支援): 第1層だけでは不十分な子供に対し、外部の専門家が園を訪問し、アセスメントや具体的な関わり方を助言する。
第3層(個別・高度専門的支援): 医療機関や児童発達支援事業所等で、1対1の専門的な介入を実施する。
教授は「全ての子供が児童発達支援(自発)に通う必要があるわけではない」と強調されました。園の中での対応(第1層)を充実させることで、地域全体の福祉財政の圧迫を抑えつつ、より高い効果を得られるという考え方です。
「輝HIKARI」としての発言:人材育成と質の担保
私からは、現場を預かる経営者の視点から、特に人材育成とサービスの質の担保について発言しました。
専門性の追求と研修プログラムの活用
輝HIKARIでは、長崎大学が提供している「子どもの心の医療・教育センター」の高度人材育成プログラムについて。保育士が児童発達支援の現場に来ると、どうしても「保育レベル」の療育にとどまってしまう傾向がありますが、オンラインで学べる多彩なプログラムは職員の質の向上に大きく寄与していることを伝えました。
ただし、こうした質の高い研修には費用もかかります。国からの補助制度が整えば、より多くの職員を参加させることができ、地域全体の療育レベルを引き上げることが可能になると確信しています。
児童発達支援事業所の「飽和」と「質」の懸念
現在、都市部を中心に児童発達支援事業所が急増しており、いわゆる「猫も杓子も自発」という状況になっています。中には、本来の療育とは程遠い、ピアノ教室のような習い事レベルのサービスで受給者証を利用させているケースも見受けられます。
一方で、強度行動障害など、真に手厚い支援を必要とする重度のお子さんを預かる事業所が不足し、回数制限などのしわ寄せが行っている現実は、非常に深刻な問題です。
こども家庭庁の回答と今後の展望
これらの提起に対し、こども家庭庁の源河審議官や今出専門官からは、具体的な施策の進捗について説明がありました。
アセスメント強化事業: 令和7年度の補正予算において、健診後の二次相談やアセスメントを強化するための予算(約3億円)を計上しているとのことです。
自治体が専門職を雇用し、個別の支援方針を立てる取り組みを補助する狙いがあります。給付決定プロセスの標準化: 全国1,741自治体でばらつきがある受給者証の給付決定プロセスについて、今後3年間で指標を標準化する研究事業を開始する予定だそうです。
特に「子供の状態」「家族の状態」「地域の受け入れ体制」の3軸で評価するという考え方は、岩永教授の提言とも一致しており、今後の制度設計に期待が持てる内容でした。
総括と次なるステップ
今回の意見交換を通じて、学術的知見、国の政策方針、そして我々のような現場の視点が重なり合う非常に有意義な場となりました。
特に、岩永教授が言及されたインドネシアなどASEAN地域との人材交流については非常に興味深く拝聴しました。
福祉分野の人材不足を解消するためには、国内だけでなく海外の優秀な人材を呼び込み、大学院レベルの教育と連携させるような仕組み作りが今後不可欠になるでしょう。
今回の会合で得た「5歳児健診を起点とした切れ目ない支援」や「エビデンスに基づいた多層的支援」の知見を、新体制下での事業展開に反映させていきたいと考えています。


