「障害者デジタルしごと応援事業」の脱福祉モデル、デジタルラボえどがわを視察しました

10月21日午前、東京都江戸川区の「デジタルラボえどがわ」を視察しました。同行したのは、岩手県奥州市の社会福祉法人岩手ひだまり会の鈴木偉作副理事長と、山本博司前参議院議員です。私がここを訪れるのは度目になります。

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岩手ひだまり会とのご縁
岩手ひだまり会とのお付き合いは2015年に始まりました。当時、鈴木副理事長が、障害のある子の歯科治療の課題を調べていたところ、マイクロブレインで開発した歯科治療支援ソフト「はっするでんたー」を見つけ、私に直接お電話をくださったのがきっかけです。私が2015年2月に奥州市を訪ねたことから交流が始まり、以来11年、職員が互いの施設で研修を受けるなど、埼玉と岩手の距離を越えて行き来を続けています。

2022年には山本氏とともに奥州市の施設を訪問しました。

社会福祉法人 ひだまり会の高橋理事長らと意見交換会(岩手県奥州市)

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そのとき大きな課題になっていたのが「18歳の壁」です。

障がい児の「18歳の壁」

本日(7日)、公明新聞の3面に掲載されている『ズバリ聞きます!障がい児の「18歳の壁」』についてお知らせします。 記事本文ズバリ聞きます! 障がい児の「18歳の壁」 答える…

特別支援学校を卒業すると放課後等デイサービスは使えなくなり、就労継続支援B型の活動は15時ごろに終わります。そこから夕方6時ごろまで、本人の居場所がなくなります。首都圏では自治体の補助で手当てが進んでいましたが、奥州市では財政事情から手当てがなく、ひだまり会がボランティアでこの時間を支えてきました。山本氏がヒアリングをして国に取り上げたことで、各地の自治体の取組が動き出しました。鈴木副理事長によると、埼玉では相談から3か月で実現したことが、岩手では1年以上かかったそうです。同じ制度でも、地域によって届く速さが違います。

デジタルラボえどがわの取組
運営するのは、江戸川区内で障害者の就労支援を行う特定非営利活動法人自立支援センターむくです。鈴木誠副理事長、小林理恵副理事長から説明を伺いました。江戸川区が区有地を貸し、日本財団が建物とスキャナーなどの機器の整備費を全額助成して、今年4月に開所しました。行政や企業から預かった紙の文書をデジタルデータにして納品する施設です。

作業は機械に任せきりではありません。まず依頼者と一緒に書類を確認し、ホチキスや綴じ紐を外して1枚ずつ読み取るのか、製本のまま見開きで読み取るのかを決めます。割り印や付箋、途中に挟まった大判の地図をどう扱うかも、ここで決めます。そのあと仕分け、スキャン、画像検査を経て、依頼者が指定する規則でファイル名とフォルダを整え、最後に原本を元の状態に戻して返却します。どの工程にも確認と判断が要ります。

その仕事を、利用者の皆さんがユニホーム姿で担っていました。以前は駅から遠いB型事業所で、ペンの袋詰めなどの内職をして、月2万円弱の工賃だった方々です。働く姿勢も表情も、以前の作業とはまったく違うと職員の方が話していました。

現在はB型事業所として運営し、15名が従事しています。来年度からはこの15名が、むくの職員として雇用されるよう目標を定めています。

課題も率直に伺いました。雇用に移ると、受けられなくなる福祉サービスがあります。生活保護を受けている方の中には「抜け出したい」と強く望む方がいる一方、将来の医療費を心配して踏み切れない方もいます。むくの鈴木副理事長は、報酬改定のたびに事業が揺さぶられる状態から抜け出し、自分たちの力で運営したいと語っていました。ひだまり会の鈴木副理事長も、制度の変更に振り回されると職員の目が利用者に向かなくなる、と応じていました。

意見交換で話したこと

  1. 見学の有料化。むくでは見学を有料にしています。輝HIKARIも見学の申込みが集中した時期に料金を定め、ホームページに明示しました。職員の時間と利用者の個人情報を守るために必要な線引きであり、私も賛成だとお伝えしました。
  2. 情報セキュリティ。デジタルラボのサーバーは外部のネットワークから切り離されています。私も今週、管理している15のウェブサイトの脆弱性対応に追われていたところで、行政文書を扱う現場の管理体制から学ぶことが多くありました。
  3. 法人格。むくは職員約100名の規模ですが、NPO法人のまま運営しています。NPO法人から社会福祉法人へ移ったひだまり会の鈴木副理事長は、負担を考えるとNPOのままのほうがよいというご意見もありました。
  4. 法人内の業務を利用者に任せる場合。B型の利用者に法人の事務を担ってもらうなら、業務委託契約を結び、適正な価格を明確にしておく必要があることを確認しました。

視察を終えて
この取組が成り立つには、三つの条件がそろう必要があります。自治体が発注を続けること、財団が初期投資を担うこと、法人が仕事の工程を一つずつ設計することです。どれか一つが欠けても続きません。地方では自治体が発注の規模を見通せず、障害福祉の担当課の反応が鈍い状態が何年も続く例があると、山本氏も話していました。奥州市ではひだまり会が市内の障害のある子どもの多くを受け入れており、居場所や家族の休息を支える役割を長く担ってきました。その土地で「脱福祉」を進めるには、首都圏とは別の手順が要ると考えます。

放課後等デイサービスを運営する立場から見ると、この取組は子どもたちが18歳を過ぎた先の選択肢を広げるものです。重い障害のある方の暮らしは行政がしっかり守る。少しの支援があれば働ける方は、民間が雇用の場をつくる。デジタルラボえどがわは、その後者を形にした例です。人の幸せは「①人に愛されること ②人に褒められること ③人の役に立つこと ④人に必要とされること」にあります。働くことは、そのうち三つに直接つながります。

一方で、雇用へ移る際の生活保護や医療費の不安を、本人や家族の決断だけに委ねてよいとは思いません。移行の途中で失敗しても戻れる道を用意しておかなければ、挑戦する人は増えないからです。

輝HIKARIとしても、埼玉県での展開に向けた検討を続けています。ひだまり会が岩手で一歩を踏み出せるよう、これからも情報と経験を分かち合っていきます。ご対応いただいた自立支援センターむくの皆さま、ありがとうございました。