びいんず夢楽多(むらた)を訪問—無添加の油揚げがつくる、月額工賃7万円への道—:宮城県村田町
お使いの端末の音声機能で読み上げます。音量は端末側で調整してください。
1日、宮城県柴田郡村田町にある「びいんず夢楽多(むらた)」を訪問いたしました。名物のみそ漬け油揚げを購入し、現場で働く利用者の方々とも触れ合わせていただきました。

びいんず夢楽多(むらた)について
びいんず夢楽多は、社会福祉法人はらから福祉会が運営する就労継続支援B型事業所です。
宮城県村田町にあり、特産の「そらまめ」や「スイートコーン(味来)」に並ぶ「大豆・青大豆」を使用した油揚げ・がんも・厚揚げなどを製造、販売しています。
油揚げの生地作りから袋詰めまでの全工程を施設で行っており、無添加で安全でとても美味しい、懐かしくも感じる油揚げを製造しています。その中で、名物のみそ漬け油揚げを購入させていただきました。
この「全工程を施設で行う」という一点が、実はとても重要です。下請けとして一部の工程だけを担うのではなく、原料から製品までを自分たちの手でつくり上げている。だからこそ、売れた分がそのまま工賃として利用者の方に還っていく構造になります。工賃を上げるという目標は、掛け声ではなく、事業の設計そのものによって決まります。
2021年11月には、この油揚げがテレビ番組「マツコの知らない世界」で取り上げられ、一時は製造が追いつかないほどの反響がありました。同じ法人の「蔵王すずしろ」でつくられる、はらから豆腐も2018年3月に同番組で紹介されています。ただ、はらから福祉会はその反響に頼りきることなく、その後は直販に力を入れ、利益率を高めることで工賃向上につなげる道を選びました。
2022年7月に見学させていただいた時点では、36名の利用者の方が月額工賃4万5千円を得ながら就労されていました。全国の就労継続支援B型事業所の平均工賃が月額1万数千円という水準であることを考えると、その3倍近い数字です。

はらから福祉会との9年
輝HIKARIとはらから福祉会のご縁は、2017年8月にさかのぼります。
きっかけは一本の新聞記事でした。河北新報が報じた「キッチンカーで就労支援 障害者の収入増図る」という記事です。人口4万人に満たない宮城県柴田町で、町ぐるみで障がいのある方の働く場をつくっているという内容でした。面識も紹介もないまま、金子代表理事が直接電話をかけ、見学をお願いしたのが始まりです。
このとき見学させていただいたのは、豆腐工場の「蔵王すずしろ」、おからパンと牛タンカレーを製造する「くりえいと柴田」、そして石窯ピザと牛タンのレストラン「らぽるの森」。最後に本部で、当時の武田元理事長と2時間にわたり懇談させていただきました。
武田理事長(当時)のお話で、今も忘れられない言葉があります。
「金子さんね。うちは利用者さんに何とかそれなりに生活ができるように、月に7万円支払えるように頑張ってる。でもまだ平均5万円位なんだよね。でもこの工賃だって維持するのは必死だよ。だってうちの利用者さんは300人位いる。すると毎月1500万円の人件費が発生することになるからね」
工賃向上という言葉は、福祉の現場では日常的に語られます。しかしその一言の重さを、数字とともに突きつけられた瞬間でした。
もう一つ、法人の理念として掲げられている言葉があります。
「障害を理由にしたらできない理由はいくらでもある。困難は不可能とは違う。知恵を出し試行錯誤して、どうしたらできるようになるかを考えて行く」
「はらから」とは同胞(はらから)、同じ母から生まれた兄弟姉妹のこと。障がいのある者もない者も同じ「はらから」であるという願いが込められた名前です。
その後も交流は続きました。2018年11月には団体役員らと共に再訪し、武田理事長と懇談。2022年7月には約3年ぶりに本部を訪ね、牛タン加工の「えいむ亘理」、豆腐の「蔵王すずしろ」、そしてこの「びいんず夢楽多(むらた)」を見学させていただきました。2023年8月には、武田理事長のご勇退を受けて新しく就任された岡本理事長と懇談し、本部と各施設を回らせていただいています。
今回で、はらから福祉会への訪問は5度目となります。
本日の訪問
工房では、大豆を仕込むところから袋に詰めるところまでが一つの流れとしてつながっており、それぞれの持ち場で利用者の方々が黙々と、そして生き生きと作業をされていました。
みそ漬け油揚げは、そのまま焼くだけで一品になります。添加物に頼らず、素材と手間だけで味を立ち上げている。懐かしさを感じるのは、そこに余計なものが入っていないからだと思います。
訪問を終えて
はらから福祉会に足を運ぶたびに考えさせられるのは、「工賃を上げる」ということが、単なるスローガンではなく経営そのものだということです。
月額7万円という目標は、支援する側の努力だけでは届きません。売れる製品をつくり、販路を開き、利益率を上げる。そのうえで、障がいのある方一人ひとりに合った工程を設計して、全員が戦力として関われるようにする。福祉と経営の両方を、同時に、同じ本気度でやり切らなければ成立しない目標です。
人口1万人規模の村田町、3万人台の柴田町や亘理町で、それを20年以上続けてこられた。この事実そのものが、規模や立地を言い訳にできないことを示しています。
輝HIKARIが日々向き合っているのは、放課後等デイサービスと児童発達支援に通う子どもたちです。今日目の前にいる子どもたちが、10年後、15年後にどこで働き、いくらの収入を得て、どう暮らしていくのか。その出口を知らないまま、目の前の支援だけを続けるわけにはいきません。だからこそ、就労の現場に足を運び続けています。
びいんず夢楽多の皆様、はらから福祉会の皆様、本日はお忙しいなかご対応いただき、誠にありがとうございました。今回の学びを、さいたま市・志木市での日々の支援に還元してまいります。
施設情報
びいんず夢楽多(むらた)/就労継続支援B型 開設 2002年(平成14年)4月1日/定員 40名 〒989-1322 宮城県柴田郡村田町大字関場字屋敷前137-1 電話 0224-82-1177/FAX 0224-82-1178 営業 火曜日〜土曜日 9:00〜15:00
https://www.harakara.jp/contents/?a=murata
社会福祉法人はらから福祉会について
宮城県柴田町に本部を置く社会福祉法人です。1980年代に、地域の障がいのある方・ご家族・教職員らの有志によって始まった任意団体「はらから会」を源流とし、現在は宮城県内で就労継続支援B型を中心に、就労移行支援、就労継続支援A型、自立訓練、グループホームなどを運営しています。
「あなたは月額1万2千円で生活できますか?」という問いを出発点に、障害基礎年金と合わせて月額15万円前後での暮らしを実現するため、B型事業所における月額工賃7万円を目標に掲げています。
| 事業所 | 所在地 | 内容 |
|---|---|---|
| びいんず夢楽多(むらた) | 村田町 | 油揚げ・がんも・厚揚げの製造。定員40名 |
| 蔵王すずしろ | 蔵王町 | 豆腐・豆乳・湯葉の製造。「はらから豆腐」 |
| くりえいと柴田 | 柴田町 | おからパン、レトルト加工食品(牛タンカレー) |
| えいむ亘理 | 亘理町 | 牛タン加工 |
| らぽるの森 | 柴田町 | 石窯ピザと牛タンのレストラン(柴田町太陽の村) |



