全国手をつなぐ育成会連合会・LITALICOライフとの懇談会 〜親なき後の安心と当事者の意思決定支援に向けて〜
7日、都内にある一般社団法人 全国手をつなぐ育成会連合会の事務所を訪問いたしました。今回の懇談は、日頃から大変お世話になっている山本博司前参議院議員氏(現・日本財団アドバイザー等)が橋渡しをされ、輝HIKARIの金子代表理事も同席させていただく形で実現した懇談です。
懇談では、同連合会の又村あおい常務理事(事務局長)に、株式会社LITALICOライフの鈴木健部長をご紹介し、「障がい者が親なき後も住み慣れた地域で安心して生活するための支援」や「当事者の意思決定・社会参加のあり方」について、非常に深く、熱意に満ちた意見交換を行うことができました。

以下に、今回の懇談で交わされた具体的な内容と、そこから見えた今後の展望について、私の視点からご報告いたします。
1. 全国手をつなぐ育成会連合会の現状と新たな取り組み
まず、又村常務理事より、連合会の歴史と現在の活動、そして抱える課題について丁寧なご説明をいただきました。
同会は昭和27年に3人のお母様方が教育保障を求めて立ち上げたところから始まり、実に75年の歴史を持っています。現在は47都道府県および主要政令指定都市などの56正会員による4層構造(市区町村・都道府県・ブロック・全国)で組織され、約10万人の個人会員を擁しています。
しかし、全国で療育手帳の認定を受けている約130万人という数字から見れば、会員の割合は1割に満たないという現状があり、組織の維持・発展は極めて重要な命題となっています。その中で、機関誌「手をつなぐ」(月刊・約2万2200部発行)の展開や、施設・事業所を対象とした「特別団体賛助会員(年会費3万円)」の募集など、新たな基盤強化を進められているとのことでした。この賛助会員には、アスクルの割引利用権や研修動画の無料配信といった実利的なメリットも用意されており、民間事業者との連携も含めてさらなる拡大を目指されています。
また、直近の大きな活動として、11月1日に兵庫県神戸市で開催される「全国大会」の準備が進んでおり、対面での直接交流の場として全国から1500名規模の参加が見込まれているとのことでした。

2. LITALICOライフが挑む「親なき後」のワンストップ支援
続いて、LITALICOライフの鈴木部長より、同社が展開する「親なき後」を見据えたライフプランニングおよびコンサルティングサービスについてプレゼンテーションをいただきました。
LITALICOは、これまで0歳〜18歳向けの「LITALICOジュニア」、18歳以上の就労を支援する「LITALICOワークス」を運営してきましたが、「ライフステージに応じたお金や生活の相談をワンストップでできる場所がない」という声に応え、8年前にライフプランニング事業を立ち上げたそうです。親御様に万が一のことがあった際のお金の残し方(保険制度の活用など)の個別相談を無料で行う仕組みを構築し、昨年度からはさらに踏み込んで、遺言書のコンサルティング、任意後見制度の活用、死後事務委任契約といった、民間だからこそ動ける「親なき後」の具体的な仕組み作りに特化されています。
鈴木部長からは、「資産はあるものの、親の病気や認知症、本人の精神疾患などが重なり、行政や福祉が介入できないまま孤立してしまった」という痛ましい事例も共有されました。こうした悲劇を防ぐためにも、事前の法的・財政的な備えが不可欠です。実際に目黒区や世田谷区の親の会と連携して開催したセミナーや個別相談会では、平日の昼間にもかかわらず枠が一瞬で埋まってしまうほどの大きな反響があり、情報がまだまだ届いていない親御様が数多くいることを痛感させられます。
特に70代〜80代の高齢の親御様は、インターネットでの情報収集が難しく、平日に本人が施設に通っているわずかな時間(10時〜14時頃)しか動けないという特有のライフスタイルがあります。又村常務理事からも、このターゲット層の動線に合わせたセミナーのセッティングや、対面(首都圏)とオンライン(地方)のハイブリッドな周知方法など、育成会のネットワークを活かした非常に具体的なアプローチの提案がなされました。

3. 具体的な連携への第一歩
11月に開催される「全国手をつなぐ育成会連合会 全国大会(神戸)」が開催されます。そこで何らかの連携を模索していく方向で検討がされました。全国から集まる多くの育成会の当事者・ご家族に対し、ライフサポートを知っていただく機会になると感じました。
4. 当事者の意思決定・会議参加のあり方とITの可能性(私の視点)
懇談の後半では別件ですが、又村常務理事から知的障害のある当事者が会議等へ実効性をもって参加できる(マニュアル・ガイドライン策定)を検討されているというお話を伺いました。これに対し、私は当事者の親として、また障害福祉に携わる者として、非常に強い興味と共感を覚えました。
実は、私の息子も近々ラジオ出演を控えております。出演の打診があった際、「本人に決めさせてほしい」と伝えたところ、本人が自ら「出たい」と意思を示しました。テレビとは異なり、言葉だけで伝えるラジオという媒体でどう表現するのか見守る部分もありますが、本人が自らの意思で挑戦することに大きな意味を感じています。
障害福祉の現場では、車いすや機器を横に置いた当事者の横で、親御様や支援者が代弁してしまい、本人の本当の声が置き去りになってしまうケースが多々見受けられます。「食べものは何が好き?」という問いに対し、本人が答える前に周りが「ハンバーグだよね」と先回りしてしまうような日常の些細な一幕が、結果として本人の意思決定の機会を奪うことにつながりかねません。私(金子代表理事)は息子が中学生の頃から、必ず物事を本人に選ばせ、決定させることを意識してきました。
今回の研究事業において、当事者が単なる「出席者(お客さん)」として席に座るだけでなく、事前に資料の丁寧な説明を受け、当日も発言の機会が確保され、後からのフォローもあるという「当たり前の配慮」が標準化されることは極めて重要です。
私は過去2年間、一般社団法人テクノイド協会の委員として、知的障害のある方の意思表示における支援機器やITツールの活用研究に携わってまいりました。一言も話すことができなくても、聞く力や理解力がある重度の自閉症の方などが、タブレットやITツール、意思表示支援機器を活用することで、会議の場で「Yes/No」や自身の選択を示す環境は十分に作ることができます。又村常務理事が考えているこの支援において、こうした環境整備の観点や最新のITツールの活用方法が盛り込まれるよう、ぜひ私どもの知見も役立てていただきたいと提案いたしました。
おわりに
「親なき後」の課題は、家族だけの問題ではなく、行政、民間、そして私どもNPOを含むあらゆる資源を総動員して取り組むべき社会全体のテーマです。日本財団のプロジェクト、LITALICOライフ様の先進的な民間サービス、そして全国手をつなぐ育成会連合会様の歴史あるネットワークが、このように山本博司氏を起点として有機的に結びつき始めたことに、大きな希望を感じております。
当法人「輝HIKARI」としても、障害当事者やご家族の皆様が、親亡き後も住み慣れた地域で安心して、そして何より「自分自身の意思」を持って尊厳高く生きていける社会の実現に向け、これからも皆様と手を携え、全力で行動してまいります。大変に貴重で有意義な時間をありがとうございました。


