障害者デジタルしごと応援事業「埼玉モデル」の現場へ!埼玉県総合リハビリテーションセンターを見学・意見交換(上尾市)
お使いの端末の音声機能で読み上げます。音量は端末側で調整してください。
10月16日午後、日本財団アドバイザーの山本博司氏(前参議院議員)とともに、上尾市の埼玉県総合リハビリテーションセンターを訪問しました。

障害者デジタルしごと応援事業は、国立国会図書館の蔵書や自治体の行政文書のデジタル化を障害者施設が担う取り組みです。日本財団が機材整備を助成し、参加施設は2024年度の8か所から2025年度は13か所に増え、2026年度以降は20か所を見込んでいます。東京コロニー東村山では、知的障害のある利用者の工賃が月9万円を超えました。就労継続支援B型の全国平均は月約2万4千円ですから、その差は歴然です。私も5月に東京の大田福祉工場とデジタルラボえどがわを視察し、埼玉での展開に関わってきました。
今回見学したのは、埼玉県が単独予算約353万円で実施している行政文書電子化モデル事業です。公募で選ばれた3事業所から、スタッフを含む8名がセンター内でブックスキャナーなどを使い作業していました。作業は10月中に終え、その後マニュアルを作成します。手順が文書になれば、県内の他の事業所が後から加わるときの共通の土台になります。


見学後、埼玉県障害支援課の田部井瞭主査、国松広大主事、一般社団法人埼玉セルプセンター協議会の竹村絵理会長(社会福祉法人あげお福祉会事務局長)、根岸瑞栄副会長(社会福祉法人はぐぐむ会理事長)と意見交換しました。主な話題は次の2点です。
- 国の地方創生臨時交付金を使った「障害者就労施設生産性向上支援事業補助金」(1拠点3,000万円)による、上尾と県北部(熊谷)の2拠点整備。建物などの共同作業拠点やドキュメントスキャナー等の機材がどこまで整ったか、今後どう運用するかを伺いました。
- 県立図書館の蔵書・資料と、県の行政文書の電子化。県福祉部が中心となり、行政文書の発注を増やす方向でとりまとめを進めているとのことです。
輝HIKARIは放課後等デイサービスと児童発達支援で、いま子どもたちと向き合っています。この子たちが10年後、15年後に、地域で自分の力を生かして働ける場所があるか。その場所がなければ、学校卒業後に家にこもり、うつなどの二次障害につながりかねません。正確さと根気が求められるデジタル化の仕事は、発達特性のある人が強みを発揮できる職域の一つです。行政が発注者になれば、一時的な善意ではなく、続く仕事として成り立ちます。
マニュアル、拠点、機材、行政の発注。埼玉モデルを動かす要素は形になりつつあります。ただ、県全体の発注量がどこまで積み上がるか、拠点から遠い地域の事業所をどう参加させるかは、まだ見えていません。児童期の支援から就労までを一本の線でつなぐ立場から、この取り組みを引き続き応援していきます。
障害者デジタルしごと応援事業とは?
障害者デジタルしごと応援事業は、紙の資料をデジタル化する仕事を障害者施設が請け負い、利用者の工賃を大きく引き上げる日本財団の取り組みです。「日本財団はたらく障害者サポートプロジェクト」の一つとして進められています。
仕組みは次のとおりです。
- 国立国会図書館が蔵書を日本財団へ送り、日本財団が業務を受注します。
- 日本財団は専用スキャナーや保管庫などの機材を施設に助成し、共同受注窓口(福岡ではセルプセンター福岡)を通じて各施設に仕事を割り振ります。
- 施設の利用者は、受け取り・保管、劣化状況の事前調査、スキャニング、画像検査、目次などのデータ入力、返却までの工程を担当します。
成果として、東京コロニー東村山では知的障害のある利用者の工賃が月9万円を超えました。就労継続支援B型の全国平均は月約2万4千円です。参加施設は2024年度の8か所から2025年度は13か所に増え、2026年度以降は北海道、四国、山陰などを加えて20か所を見込んでいます。
国会図書館以外にも仕事は広がっています。障害者優先調達推進法を使えば、自治体は行政文書のデジタル化を障害者施設へ優先的に発注できます。福岡県では県庁内の8部署から90件、約1,763万コマのデジタル化ニーズが確認されました。埼玉県でも上尾の総合リハビリテーションセンターでモデル事業が始まり、上尾と熊谷に共同作業拠点を整備しています。
短期的には、高い工賃と専門的な実績づくりが利点です。長期的には、行政が継続して発注する仕組みにできるかが鍵になります。一方で懸念もあります。国会図書館の蔵書のデジタル化はいずれ終わりますし、行政文書には個人情報が含まれます。参議院決算委員会でも、個人情報が漏れる危険への対策が論点として取り上げられました。仕事量の確保と情報管理の体制づくりが、事業を続けるうえでの課題です。



