「発達障害者支援法」改正へ向けた第1回ヒアリングに出席――現場の実践とデジタルの力で、より実効性ある法改正へ(発達障害の支援を考える議員連盟総会)

10月13日の夕方、参議院議員会館にて開催された「発達障害の支援を考える議員連盟総会」に、日本発達障害ネットワークの顧問でも山本博司氏(前参議院議員)と共に金子代表理事が出席してまいりました。

本議連は、衆参あわせて167名(衆院116名・参院51名)の国会議員が超党派で参加されており、今回の総会は来年に向けた「発達障害者支援法改正」の本格的なキックオフとなる重要な節目の会合です。

司会・進行は公明党の三浦信祐 参議院議員(事務局長)が務められ、野田聖子 会長のご挨拶で幕を開けました。冒頭、野田会長からは「これまで学者等からのヒアリングが先行しがちだったが、今回は現場の最前線で子どもたちや当事者に向き合っている民間の声、働く人たちを支える視点から率直な意見を聞き、法改正に生かしたい」という力強いメッセージがありました。

第1回目のヒアリングとして、発達障害支援・障害福祉領域のフロントランナーである民間3社(LITALICO、Kaien、ミライロ)の代表者より、現行法の課題と法改正に向けた具体的な提言が行われました。

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■ 民間各社からの提言ハイライト

1. 株式会社LITALICO(長谷川 敦弥 社長/亀田 徹 シニアバイスプレジデント)

  • デジタルを活用した早期発見:5歳児健診の実施自治体が未だ約2割にとどまる現状を踏まえ、オンライン事前問診などのスクリーニングツールを活用し、自治体の負担・コストを抑えながら早期発見・早期支援につなげる体制の必要性を提言。
  • オンラインによる支援の制度化:コロナ禍の特例として認められていたオンライン支援の効果(不登校児へのアプローチ、家庭環境や養育環境の把握など)を振り返り、一定の要件を満たす場合には平時でも制度として認めるべきと提案。
  • 教育と福祉の連携強化(保育所等訪問支援の規制緩和):学校現場等と連携する「保育所等訪問支援」について、現行ルールの「原則月2回まで」という回数制限が支援の継続性や専門職派遣の大きな壁になっているとし、制限の緩和や民間専門家の学校派遣を柔軟に行える仕組みづくりを要請。

2. 株式会社Kaien(鈴木 慶太 社長)

  • ニューロダイバーシティと「グレーゾーン・境界知能」への視点:発達障害を「欠陥」ではなく「段階的なグラデーション(ニューロダイバーシティ)」として捉える重要性を提示。法律上の厳格な枠組みに囲い込むだけでなく、グレーゾーンや境界知能など、制度の狭間で生きづらさ・働きづらさを抱える人たちを包摂する環境づくりが急務であると指摘。
  • 周囲(環境)へのアプローチと支援センターの地域格差:当事者本人だけでなく、家族・職場・学校といった「周囲の環境」へのアプローチこそが最も効果的であるとし、発達障害者支援センターの地域格差の解消や、法の文言を最新の医学的知見に合わせてアップデートすることの必要性を提起。

3. 株式会社ミライロ(垣内 俊哉 代表 ※オンライン参加)

  • デジタルデータの連携と「合理的配慮」の社会実装:国内で290種類以上存在する障害者手帳の電子化(ミライロID)の実績をもとに、本人が窓口・職場・学校などで毎回ゼロから特性や配慮事項を説明しなければならない負担を解消する仕組みを提言。本人同意・共通API・強固なセキュリティを担保した「合理的配慮のデータ共有基盤・ガイドライン」を法改正を契機に実装すべきと訴えられました。

■ 現場の実践者・ITエンジニアの視点から感じた論点

ヒアリング後の国会議員・関係省庁との質疑応答では、非常に深く踏み込んだ議論が交わされました。児童発達支援や放課後等デイサービス、就労支援の現場を運営し、同時にITエンジニアリングに携わる私の立場からも、極めて示唆に富む内容でした。

① 教育と福祉の連携における「縦割りの壁」

今枝宗一郎 衆議院議員(前デジタル副大臣)からの「保育所等訪問支援の普及が進まない現場のハードルはどこにあるのか」という問いに対し、長谷川社長からは「学校現場の理解・受け入れ体制」とともに「月2回という回数制限」が挙げられました。

また、フロアからは「個別の教育支援計画(文科省)」と「個別支援計画/障害児支援利用計画(厚労省)」の連動について省庁へ質問が飛びましたが、現状では内容の統一・データ連携はなされていないという答弁がありました。

現場で日々子どもたちを支える身としても、文科省・厚労省・こども家庭庁の縦割りを解消し、支援計画の連動や訪問支援の回数緩和が実現すれば、学校現場と事業所が一貫した支援を格段に届けやすくなると強く実感します。

② オンライン支援における「質の担保」と「モラルの課題」

国民民主党の議員から「オンライン支援の制度化には、支援の質担保と事業者のモラルハザード防止が不可欠」という鋭い指摘がありました。

これに対し、LITALICO長谷川社長は「デジタルの監査ログやチェック体制を活用して適正性を担保すべき」と前向きな提案をされた一方、Kaien鈴木社長からは「現場の実態としてモラルの担保は容易ではなく、対面と比べた支援効果への懸念もあるため、慎重であるべき」という現実的かつ率直な反対意見も出されました。

この推進と慎重の両論は、まさに障害福祉現場のリアリティを物語っています。ITの可能性を信じつつも、安易な形骸化を許さず、子どもたちへの実質的な支援効果をどう担保するか――非常に本質的な議論でした。

③ 福祉行政のDXと「紙文化」からの脱却

質疑の中では、障害者手帳に伴うタクシー券や駐車禁止除外指定車標章が未だに紙ベースで交付・運用されている不便さや、自治体ごとの対応格差が指摘されました。

総会の結びで野田聖子会長も「未だにマイナンバーカードのコピーを紙で提出させているような実態がある。最もDXの恩恵を必要としている福祉の現場にこそ、デジタルを行き渡らせなければならない」と強く警鐘を鳴らされていました。

ミライロ垣内代表が提案された「合理的配慮の共通プラットフォーム」も含め、当事者やご家族、そして現場職員の事務負担を減らし、本来の支援に時間を割くためのDXは、今回の法改正で絶対に前に進めるべき重要テーマです。

■ 次回に向けて

閉会後には、登壇されたLITALICOの長谷川社長、Kaienの鈴木社長、司会を務められた三浦信祐 参議院議員、原田大二郎 参議院議員、そしてJDDネット(日本発達障害ネットワーク)の市川宏伸 名誉理事長、高木美智代 顧問、日詰正文 副理事長、藤堂栄子 専門委員、日頃より大変お世話になっている山本博司 顧問、また議連副会長の早稲田ゆき 衆議院議員など、多くの皆様と情報交換を行い、記念撮影をさせていただきました。

現場で子どもたちと向き合う福祉の視点、そして仕組みを支えるITの視点――その両面を持つ民間事業者として、今回の法改正の議論に現場のリアルな声を届けていく責任の重さを改めて感じています。

次回の議連総会(第2回ヒアリング)は、10月20日(火)16時より開催される予定です。

子どもたちや当事者が自分らしく生きられる社会の実現に向け、引き続き議論の行方を注視し、現場からの提言と実践に力を尽くしてまいります。