「第11回 全国手をつなぐ育成会連合会 全国大会神戸大会」シンポジウムへ参加しました

11月1日、神戸市文化ホールにて開催された「第11回 全国手をつなぐ育成会連合会 全国大会神戸大会」に、日頃より障害福祉政策の推進や現場の課題解決に向けてご指導・ご連携いただいている山本博司前参議院議員と共に参加いたしました。

今大会の中で特に注目を集めていたシンポジウム「親なきあとに向けて ~制度・サービスの現況と課題~」を拝聴し、国の制度改正の最新動向から全国各地の先駆的な実践まで、今後の法人運営および地域支援体制の構築に向けた多くの示唆を得ることができましたのでご報告いたします。

1. シンポジウム概要・登壇者

  • テーマ: 親なきあとに向けて ~制度・サービスの現況と課題~
  • 会場: 神戸市文化ホール
  • コーディネーター:
    • 大平 眞太郎 氏(社会福祉法人グロー 法人事務局総務部長/日本相談支援専門員協会 代表)
  • シンポジスト:
    • 松岡 友太 氏(社会福祉法人四ツ葉会 グループホームティール 管理者)
    • 水流 源彦 氏(社会福祉法人ゆうかり 理事長/NPO法人全国地域生活支援ネットワーク 理事長)
    • 久保 厚子 氏(一般社団法人全国手をつなぐ育成会連合会 顧問/社会福祉法人グロー 理事長)
    • 古川 慎治 氏(独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園 理事)
「第11回 全国手をつなぐ育成会連合会 全国大会神戸大会」シンポジウムへ参加しましたの様子1

2. 「親なきあと」を見据えた4つの視点

冒頭、コーディネーターの大平氏より、「親なきあと」とは保護者が亡くなった後だけを指すのではなく、親御さんが年齢を重ねたり急病で入院したりして、これまで通りの支援が難しくなった段階も含めて捉えるべきであるという重要な提起がありました。また、親御さんに準備の責任を押し付けたり、ご兄弟にすべてを引き受けさせることを前提とするのではなく、「本人の好きなことや苦手なこと、体調を崩す前のサインなどを誰と共有し、地域の中でどう引き継いでいくか」という視点のもと、以下の4つのテーマに沿って報告と議論が行われました。

① 住まいの確保と組織的な専門性(松岡 友太 氏)

岡山県倉敷市で生活介護と日中サービス支援型グループホーム「TEAL(ティール)」を運営する松岡氏からは、利用者の8割が強度行動障害を有する重度知的障害・自閉症の方であるという現場の実践が報告されました。 多様な障害特性の方が混在する環境では本人に「我慢」を強いる場面が増えたという反省や保護者からの要望を受け、自閉症支援に特化した事業所を設立されています。アセスメントに基づく「構造化」を軸に、職員の価値観を押し付けない個人主体の支援を徹底されている点や、全職員への社用スマホ貸与と情報共有アプリ(ICT)の活用によって不規則勤務の中でもタイムリーに情報共有を図っている点は、私たちが日々取り組む現場運営とも深く共鳴するものでした。 特に印象的だったのは、「100点を取れる一人のスペシャリストに頼るのではなく、なぜその支援が必要なのかという根拠を共有し、職員全員が60〜70点以上の水準を継続できるチーム支援を目指す」という考え方です。トラブルが起きた際も隠さず誠実に家族へ伝え、防犯カメラの設置やいつでも立ち寄れるオープンな運営を通じて「ここなら安心して任せられる」という信頼関係を長い時間をかけて築く姿勢に、支援の本質を見ました。

② 相談支援体制と地域生活支援拠点の面的整備(水流 源彦 氏)

鹿児島市で入所施設からの地域移行や基幹相談支援センター・地域生活支援拠点の整備を牽引する水流氏からは、「地域で当たり前に暮らす」ための土壌づくりとネットワーク構築についてお話がありました。 医療的ケア児や障害児が共に育つ保育園の運営をはじめ、直近では繁華街(天文館近く)のサービス付き高齢者向け住宅の空きフロアを借り上げ、入所施設で暮らしていた91歳の最高齢の方や認知症・てんかんのある方が街中のグループホームへ移行された実践が紹介されました。移行にあたっては、本人が事前に何度も行き来して暮らしを体験し、納得感を高めるプロセスを大切にされています。 また、鹿児島市では104事業所が連携する基幹相談支援センターと、35法人が参画する地域生活支援拠点の面的整備を進め、他法人の職員同士が宿直を分担し合う「お互い様」の24時間緊急対応体制を構築されています。「緊急時になってから動くのではなく、平時から緊急(親の急な入院など)をイメージしてショートステイ等の体験を重ねておくこと」、そして行政と粘り強く対話を重ねて一人の課題を地域の仕組みへと昇華させていくことの重要性を改めて学びました。

③ 権利擁護と成年後見制度の抜本的見直し(久保 厚子 氏)

厚生労働省の専門家会議等で制度改正の議論に携わる久保氏からは、家族のアンケート調査の結果と、大きな転換期を迎えている成年後見制度の動向について解説がありました。 現在、家族の86%が親なきあとに不安を感じている一方で、43%が「将来いくら必要なのか、どんな制度や選択肢があるのか分からず手のつけようがない」と回答しています。また、現行の成年後見制度は「一度使うと亡くなるまでやめられない」「馬が合わなくても後見人を交代できない」「本人の意思が反映されにくい」「障害基礎年金のみの暮らしでは月2万円程度の報酬負担が重すぎる」といった理由から利用が敬遠されてきました。 こうした課題を解消するため、今後の民法改正によって従来の「後見・保佐」をなくして「補助」に一元化し、本人ができることは本人に任せ、遺産相続など必要な時に必要な範囲(特定の法律行為)に限定して代理権や同意権・取消権を個別設定する仕組みへと変わります。用件が終われば裁判所への申立てにより利用を終了したり、状況に応じて再開・変更したり、補助人を交代することも可能になります。 令和10年(2028年)4月からの地域の権利擁護支援体制(日常生活自立支援事業の拡大等)のスタート、同年12月頃からの新成年後見制度の施行が見込まれており、制度終了後に本人が「荒野に放り出される」ことがないよう地域で支えるチームを作ること、そして親が本人の生育歴や現状を伝える「サポートガイド(本人情報シート等)」を今から書き残しておくことの必要性が強く呼びかけられました。

④ 本人の高齢化と意思決定支援・家族が遺すもの(古川 慎治 氏)

国立のぞみの園の古川氏からは、支援者の視点から見た「障害のあるご本人の高齢化」と「意思決定支援」について具体的な知見が共有されました。 知的障害のある方は一般よりも5〜20歳ほど早く加齢が進む傾向があり、40代での生活習慣病予防、50代前半での機能低下への配慮、50代後半〜60代での身体介護技術や住環境整備(トイレや浴室の段差解消等)など、段階に応じた支援の転換が求められます。特にダウン症の方は遺伝子上の特性から30代よりアルツハイマー型認知症を発症しやすい一方、正常圧水頭症や慢性硬膜下血腫など「手術で治療・回復が可能な疾患」が認知症と誤認されるケースもあるため、精密検査による見極めが極めて重要であるとの指摘は、現場の支援者として深く心に留めるべき点でした。 また、65歳以降の介護保険優先原則において、本来は障害福祉サービスとの併用が可能であるにもかかわらず、一部の自治体で一律に介護保険への切り替えを求められる課題や、入所・グループホームでの医療連携・看取り(ターミナルケア)の課題も挙げられました。 そして最後に、親御さんが亡きあとに何を残すべきかという問いに対し、本人の感情表現のパターンをまとめた「パーソナルデータ(成育記録)」を支援者に託すこととあわせて、「支援者はいくら頑張っても家族の代わりにはなれない。お金以上に、親なきあとの本人を支える土台となる『家族との愛情と大切な思い出』をたくさん残してあげてほしい」という全国の支援者からのメッセージが語られ、会場全体が深い感動に包まれました。

「第11回 全国手をつなぐ育成会連合会 全国大会神戸大会」シンポジウムへ参加しましたの様子2

3. シンポジウムを終えて:輝HIKARIとしての今後の展望

後半のディスカッションでは、相談支援専門員が権利擁護等の役割を果たしていくためには現行の計画相談の報酬体系や受け持ち件数の見直しが必要であることや、当事者・家族団体が行政に働きかける際は、熱意ある「要望」に加えて「こういう仕組みがあれば実現できる」という具体的な「提案」を持ち寄り、地域の自立支援協議会等を通じて市町村・都道府県へ届けていくことが重要であるとまとめられました。

今回、山本博司前参議院議員と共にこのシンポジウムに参加し、制度を創る側の視点と現場で実践する側の視点の双方から「親なきあと」の課題を共有できたことは、大変有意義な機会となりました。

私たち特定非営利活動法人 輝HIKARIにおいても、幼児期・学齢期の療育(児童発達支援・放課後等デイサービス)から就労支援、そして相談支援に至るまで、ご本人とご家族のライフステージに寄り添う事業を展開しています。保護者の皆様が抱える将来への不安を少しでも安心へと変えていけるよう、まずは幼少期・学齢期からの豊かな体験の積み重ね(意思形成・意思表明の土台づくり)を大切にするとともに、ICTを活用したチーム支援の標準化・専門性の向上、そして地域の関係機関や自治体と連携した「切れ目のない支援体制づくり」に、これからも全力で取り組んでまいります。

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